今回は、「リスク」という視点から教育問題を研究している名古屋大学大学院准教授の内田良さんにお話をうかがった。

――内田さんは教育における「リスク」に着目されていますが、きっかけは?
 私の専門は「教育社会学」という社会学を母体とする学問です。社会調査を駆使し、「エビデンス(科学的根拠)」によって現象を解明していくんです。拙著『教育という病』でもエビデンスを軸に「巨大化する組体操」「部活動における体罰と事故」などを取り上げています。
 
 「リスク」という言葉を調べてみると、たんに「危険」というだけでなく「その程度を数字で表しましょう」という意味があるんです。つまり、何でもかんでも「危険」の一言で片づけてしまうのではなく、危険があるとすればそれはどれくらいのものか。できるかぎり客観的に数値化しようということです。
 
 考えてみると、学校の安全をめぐっては長らく「子どもの命を守りましょう」と言われ続けてきました。しかし、具体的に何がどれだけ危険なのか。数字で明確に示すということが行なわれてきませんでした。だからこそ、まずはきちんとしたエビデンスに基づいた分析が重要であると考えたわけです。
 

組体操のリスク 数字で表すと…

 
――なかでも組体操については、昨秋からメディアで大きな反響を呼びました。
 組体操の問題を最初に指摘したのは2014年5月でした。「組体操は、やめたほうがよい。子どものためにも、そして先生のためにも」という記事を「yahoo!ニュース」に書きました。年々巨大化している組体操の実情について警鐘を鳴らすべきだと考えたからです。たとえば、10段ピラミッドを行なう場合、最上段の高さは7メートル、土台の生徒にかかる負荷は最大で200キログラムにも達します。
 
 万が一、それが崩れたとなれば、打撲や骨折だけでは済まず、頭部や頸椎部の損傷といった重大事故を引き起こしかねません。事実、2012年度の調査によると、組体操での負傷事故は「跳び箱」「バスケットボール」に続いて3番目に多いんです。
 しかも、組体操は学習指導要領に記載がありません。つまり、子どもたちは毎年、やる必要のない活動をするなかで、重篤なケガにつながりかねないリスクにさらされているわけです。そうした事実に対し、私なりにエビデンスをそろえて提言したわけです。



――「よくぞ言ってくれた」という反応も多かったのではないでしょうか?
 むしろ、逆です。記事を書いた当初は否定的な意見ばかりでした。先生からは嫌われるとしても、少なくとも保護者の方は賛同してくれるんじゃないかと思っていましたが、それは誤算でした。

 ただし、同時に気づいたこともあります。「これは学校だけが好きでやっているわけではない」ということ。


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