不登校新聞

428号 2016/2/15

「ライファーズ」上映会&シンポジウム抄録 「問題」から「つながり」へ

2016年02月12日 16:41 by kito-shin
2016年02月12日 16:41 by kito-shin


 2016年1月10日、映画『ライファーズ』上映会&シンポジウムが大阪市で開かれた(主催・NPO法人フォロ)。監督の坂上香さん、山下英三郎さん(日本スクールソーシャルワーク協会名誉会長)、山口由美子さん(西鉄バスジャック事件被害者)が、それぞれの経験から、「関係修復」をテーマに話し合った。シンポジウムの抄録を掲載する。

坂上香(以下・坂上)
  私は中2のとき、集団リンチで半殺しの目に遭いました。その被害経験自体、苦しかったですが、事件をめぐる状況も問題でした。そのとき、誰も助けてくれなかった。先生までが「命に別状はなかったんだから学校に来い」と言うだけで、その後、いっさいケアされることはありませんでした。そのため、この被害経験にとらわれる時間は長く、フラッシュバックに襲われることもたびたびでした。
 
 18年後、唯一、信頼していた先生にバッタリ会う機会がありました。そのとき、その先生自身、生徒からの集団リンチに遭って、ひどいケガを負っていたことを知りました。先生は開口一番、「すまんかった」と言ってくれました。そこで、ようやく腑に落ちるものがありました。
 
 一方で、家庭も安全ではありませんでした。母の育て方は、当時は厳しいだけと思っていましたが、いまだったら、虐待を受けてきたんだと言えます。しかし、当時は言語化できず、モヤモヤとしたなかで、私自身が、弟という一番弱い存在に暴力を向けていました。私は加害者でもあった。加害・被害というのは、そうかんたんに分けられる問題ではないんですね。
 

アミティとの出会い

 
 そういうことから、私はテレビ番組制作の仕事で、暴力の問題を取材するようになりました。そこで、アリス・ミラーの『魂の殺人』(新曜社1983)に出会います。アリス・ミラーは、家庭内の虐待だけではなく、教育の名の下の暴力、社会常識のなかの暴力などがあって、その暴力が脈々と世代間連鎖していることを指摘していました。そして、それを止めるには、そこに意識を向け、働きかける必要があると言っていました。私は、ぜひ会いたいと思い、アリス・ミラーにアプローチしました。そこで彼女に紹介された団体のひとつが、アミティでした。アミティの特徴を、今日のテーマに則して3点あげます。

①助ける証人/事情をわきまえた証人
 
 「助ける証人」というのは、子どもが虐待などを受けているとき、実際に助けてくれる人のことです。そこまではしないけど、何かが起こっていると気づいていて、その人に関心を向ける人を「事情をわきまえた証人」と言います。アミティでは、そういう「証人」を持たなかった人たちに、再体験の機会をつくっています。
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