"伝える歩みを止めたくない”


 新学期に入り、札幌や東京など、各地で中高生の自殺が相次いでいる。「学校に行くか、死か」というところまで追いつめられる子どもたち。そうした同世代で学校に通っている子どもたちにも届けたいと、「不登校の子どもの権利宣言を広げるネットワーク」が09年に採択した権利宣言の追補版を発表した。同ネット代表の彦田来留未さん(21歳)にお話を聞いた。

――09年に発表した「不登校の子どもの権利宣言」に、メンバーの体験を追記することになった経緯は?
 権利宣言はいろいろな場所で多くの人に見てもらえました。ただ、「宣言文をつくった当事者である私たちの実体験が文章から見えづらい」という思いがずっとぬぐえませんでした。条文そのものは大人にも読んでもらうために、ややかたい文章にしましたが、ニュアンスがかたいと子どもにはうまく伝わりません。

 そこで、かた苦しい解説文を載せるより、みんなの体験談のほうがいいなって思ったんです。「私はこういう経験をしたから、こういう文章にしました」という言葉の背景にあることを伝えられてこそ、私たちの思いが届くのではないかと思ったのが最初のきっかけです。13ある体験談のなかに「これ、私と同じだ」っていうものがあれば、不安な子どもたちの気持ちを和らげることができるんじゃないかって。

――賛否両論、さまざまにあったと思いますが。
 そうですね、とくに批判的な反応ってよく届くんですよ。あるメンバーが親戚のおじさんに権利宣言を見せたとき、「同情や賛成する気持ちは起きないし、甘えだとしか思えない」って言われたそうです。でも、こういう批判ってけっして少数派の声じゃない。ネットでも「自分で選んでおいてわがままだ」など、いろいろ批判されています。

 ただ、私の場合、選んだわけではないんですよね。そうせざるを得なかったというか。権利宣言についても当初、"不登校の”という言葉を入れる必要があるのか否かで議論になりました。でも、私はどうしても"不登校の”という言葉を入れたかった。小学生で不登校をしてからいままで、そしてこれからも学校に行かない生き方は変わらないと思います。だからこそ、そうした生き方もあるんだということをかたちに表したかったんです。

好評価の声を活動のバネに


――批判ばかり耳にしていると、モチベーションの維持が大変ですよね。
 心が折れそうになりますよ(笑)。でも、「ここで止まっちゃいけない」って思ったんです。権利宣言を見て安心した子どもたちが、「不登校は甘えだ」「権利と義務は表裏一体だ」なんて批判・曲解だらけの状況を見たら、「あ、やっぱり、不登校じゃダメなんだ」ってことを再認識させちゃう。それでは意味がありません。自分たちがつくったものに対する批判にきちんと向き合いつつも、権利宣言を広げる歩みを止めちゃいけない。その思いで今年2月、「不登校の子どもの権利宣言を広げるネットワーク」を立ちあげました。

 一方で、私たちの活動を評価してくれる人たちもいます。7月に高知で行なわれた全国合宿では、権利宣言プログラムに内田良子さんが参加してくれました。大人はオブザーバーのみの参加でしたが、その後のお風呂で2回も内田さんにお会いして(笑)。「権利宣言を中学生に配ったとき、『私はいまのままでいいんだ』っていう声があったわよ」とおっしゃっていただいたときには、すごくうれしくて。批判をバネにするだけではなくて、私たちの活動を評価してくれる人たちがいる、そこに軸を置いて活動を続けたいです。

――今後は?
 不登校で悩む子どもだけではなく、不登校じゃない子どもにも読んでもらえたらと思います。私たちが小学校や中学校に出向いて権利宣言を配るなんてことは難しいかもしれないけれど、内田さんのように支えてくれる方々の協力を得ながら少しずつでも広げていけたらなって思います。

 個人的には、子どもの権利について、もっと考えたり議論したいです。不登校が社会的に認められないのは、いまに始まったことじゃないし、これからもあると思う。でもその時代によって軸は同じでも、発信したいメッセージや思いは少しずつ変わっていくんだと思う。権利宣言をきっかけに、子どもの権利や不登校について、もっと深めていきたいです。

――ありがとうございました。(聞き手・小熊広宣)