連載「ひきこもり時給2000円」vol.25


 物事というのは、ちょっと不思議だ。うまくいくときはこちらが拍子抜けするくらいうまく進むし、うまくいかないときは、何をどうやっても前に転がらない。僕が仕事に就く過程をふり返ってみると、つくづくそうなんだな、と感じる。
 
 ひきこもりの生活から抜け出して、僕が最初に仕事に就いたのは、30歳を少し超えたころだった。「今度、ここの仕事を辞める人が出るんだけど、もしよかったら圭太君、受けてみない?」。そう言われて、わりと軽い気持ちで受けてしまった。「まあ嫌じゃないし、別にいいかな……」みたいな感じで。じつのところ、それがどんな仕事なのかよくわかっていなかった。別にやりたかった仕事というわけでもまったくない。でも流れに押されるかたちで、あれよあれよで面接の席についていた。
 
 その次の仕事に就くとき、僕は履歴書を出さなかった。出すことを拒んだわけではない。とくに先方から求められなかったし、そもそもその必要がなかったのだ。「いまの仕事は週3でしょ。どうせ時間があいてるんだったら、ウチの仕事、手伝わない?」。ただそれだけ。彼らは僕のことをよく知っていたし、僕も彼らのことを知っていた。履歴書に書いてある以上のことは先刻承知済みだった。だから、履歴書を出す必要がない。


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