いじめで不登校は"重大事態”
自民、公明、民主など与野党6党が提出した「いじめ防止対策推進法」案が6月21日、参議院本会議で可決され成立した。いじめ防止対策推進法には、いじめの禁止、犯罪行為が含まれる場合の警察への通報義務などが盛り込まれた。法案は早ければ今秋から施行される。
いじめ防止対策推進法では、いじめの定義を「いじめを受けた側が心身の苦痛を感じているもの」と定義した。教師からのいじめは範囲外となった。
いじめ防止対策推進法で定めた具体策は、相談窓口の設置、定期調査、道徳教育の充実など。小中高などでは、複数の教職員やスクールカウンセラーらによる組織を設け、いじめ対策などを検討することを定めた。いじめが起きた場合、学校は迅速に事実確認をし、被害者支援、加害者への指導・助言を実施。必要に応じてアンケート調査を実施した場合は、被害者側にも情報提供を行なう。
保護者の責務にいじめからの保護
保護者には責務として、自分の子がいじめをしないための「指導」、子どもがいじめられた場合の「保護」が定められた。
審議段階から注目を集めていたのは「子どもへの規定」ならびに「いじめによる不登校の取り扱い」であった。
市民から懸念も
条文では「児童生徒はいじめを行なってはならない」といじめの禁止を規定。加害者には学校教育法に基づき、懲戒や出席停止を命ずることができる。多田元弁護士(本紙理事)は「子どもに直接、禁止を命じて、違反に対し、不利益処分を定める法律は前例がない」とし「子ども取締法」にあたると批判した。共産党、社民党もこの点などを批判した。
いじめによって不登校になった場合は「重大事態」として位置づけ、学校、市町村などは速やかに対処し調査することが定められた。市民からは「休む権利の剥奪」につながるとして懸念の声が広がっている。
また、野党案では附則に「学校への就学以外の方法による教育制度の早期導入」という文言が盛り込まれていた(本紙361号参照)。しかし条文では、いじめから不登校になった子どもの「支援の在り方についての検討を行なう」という程度にとどまった(附則第2条)。
これに対し、法案作成時から中心的な役割を担ってきた馳浩議員は、附則第2条は「文科省が、学習権の確保をより踏み込んで検討するために盛り込んだ」と語っている。
■いじめ防止対策推進法(編集部要約)
◎第一条(目的)
この法律は、いじめが、児童等の教育を受ける権利を著しく侵害し、健全な成長および人格形成に重大な影響を与えるのみならず、危険を生じさせるおそれがあるものであることに鑑み、児童等の尊厳を保持するため、いじめの防止のための対策を推進することを目的とする。
◎第二条(定義)
「いじめ」とは、児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う行為であって、該当児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。
この法律において「児童等」とは、学校に在籍する児童または生徒をいう。
◎第九条(保護者の責務等)
①保護者は、いじめを行うことのないよう指
導に努める。
②保護者は児童等をいじめから保護する。
◎附則第二条(検討)
いじめにより相当期間、学校を欠席されることを余儀なくされている児童等が適切な支援を受けつつ学習がすることができるよう支援の在り方の検討を行なう。
いじめ防止対策推進法①
いじめ防止対策推進法②
(平成25年6月21日参院可決)
いじめ防止対策推進法①
いじめ防止対策推進法②
(平成25年6月21日参院可決)
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