不登校新聞

444号 2016/10/15

先生が理由で不登校する子は2%しかいないってホント?!【緊急アンケート企画】

2016年10月16日 16:25 by koguma
2016年10月16日 16:25 by koguma


 今号1面で、不登校理由における学校と子どもとの認識のズレについて報じた。それに伴い、緊急アンケートを実施。「不登校のきっかけは先生です」と語る不登校経験者40名から回答があった。

 文科省の調査によると、「先生がきっかけで不登校になったとされている小中学生」は、不登校全体の2%以下です。上図をご覧いただければ一目瞭然ですが、ほぼ一定の割合で推移しています。

 平成26年度から過去5年間の平均は1・88%と、順位も下から数えたほうが圧倒的に早い。たまたまかもしれないので、もう5年、過去10年さかのぼってみても、平均は1・79%と、結果は同じでした。

 では逆に、不登校のきっかけとしてもっとも多いのは「不安など情緒的混乱」で、第2位は「無気力」。奇しくも、両理由のワンツーフィニッシュは5年連続なのです。要するに、「不登校は子ども本人の問題」とされているわけです。

 不登校は、毎年数千人規模で変動します。公立の先生には異動もありますし、子どもだって毎年入れ替わります。それなのに、先生が理由で不登校する子の割合が一定というのは、ちょっと気になります。

10代から50代 さまざまな声


 とはいえ、不登校の子ども全員に話を聞くのは不可能です。そこで、数の大小にこだわるのではなく、数字からは見えてこない実体験の声を集められないかと思い、8月下旬の1週間で緊急アンケートを行ないました。先生との間で、具体的に何があったのか、どう感じたのか。10代から50代までの40人からさまざまな声を頂きましたので、できるかぎり、ご紹介していきたいと思います。

何があった? どう感じた?


 回答について、「二者間」と「三者間」に分けてみました。前者は、子どもと先生との間で起きたこと、後者は子どもと先生とそれ以外の人物との間で起きたこと、といったぐあいです。

 「二者間」について多く寄せられたのは「暴力」「体罰」「無視」などです。「ケツバットされた」「平手で殴られた」「お前が弱いのが悪いと言われた」「長時間の正座を強要された」「自分の話を何も聞いてくれなかった」などのエピソードが寄せられました。

 そのときの気持ちについても「くやしくて、悲しかった」「誰も信じられなくなった」「自分なんて必要ない」というものから、「一生恨んでやる」「気力がなくなった」というものまでありました。

 「三者間」になると、話題が多様化するとともに、いじめに関するものが多く散見されました。「えこひいき」(自分だけ怒られる)、「いじめの助長」(いじめっ子と無理やり仲直りさせられて状況が悪化した)、「いじめの隠ぺい」(何度も訴えたのに無視された、いじめの事実を隠された)など。

 便宜上、関係性を軸に分けましたが、もっとも興味深かったのは、年代によるエピソードに明確なちがいがなかったことです。

 「担任のえこひいき」を理由に挙げた方のなかには10代の方も50代の方もいました。いじめの事実を無視されて「裏切られた」と感じた10代もいれば、同じく「大人を信じられなくなった」という40代の方もいました。

2016年から改訂 子どもの声を


 今回のアンケート結果だけでは、「先生を理由とする不登校が過少申告されているのではないか」と言うための論拠にはなりません。しかし、年代を問わず、先生の対応で不登校するに至ったエピソードを読んでいると▽不登校の理由は先生がずっと決めてきたこと▽その際に子どもと先生の認識に16倍もの差があること▽その状況が50年続いてきた可能性があることは、「子ども視点」を重視する本紙として看過できません。

 ただし、今年から調査方法が改められ、不登校のきっかけについて、子どもや親の意見を踏まえて決めなければいけなくなりました。今秋発表予定の調査結果にどう反映されるのか、注目です。(小熊広宣)

アンケートに寄せられた声


【二者間/暴力、暴言、体罰など】

●中学1年生時、先生からの体罰や暴力があり、理由が分からない吐き気や過呼吸に苦しんだ(20代)

●小学3年生時、忘れ物や悪い点数を取ると棒で叩かれたり長時間正座させたりして、恐怖感に苛まれた(30代)

●中3の夏休み。五月雨登校をしていたが、部活だけに登校した際、「何で部活動だけ出てくるんだよ」と先生に言われ、とても悲しくなった。死にたくもなった。それからずっと登校しなかった。(30代)


【三者間/えこひいき、いじめの助長や隠ぺいなど】

●小学生のころ、成績の悪い生徒を笑い物、バカにする態度だった。私は学校に来る意味もないのかと思った(50代)

●中1のとき、いじめを先生に相談すると「任せろ」と言われたがいじめグループ数名を注意。以降、いじめはより悪質、陰湿なものになったため不登校になった。今でも許せない。(10代)

●小4の際、同級生をいじめからかばったために自分へのいじめが始まった。以後、先生の前でも「臭い」「キモい」「ウザい」などと言われたが、学校は両親に「学校にはいじめ はなくみんな仲よくしている」と連絡していた。先生が信じられず不登校になった(20代)


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