連載「不登校50年証言プロジェクト」


 不登校50年証言プロジェクト第7弾は、元定時制高校教員の佐々木賢さんにお話をうかがった。佐々木さんは、1933年に満州で生まれ、終戦1年後に名古屋に引き揚げたが、「少年日雇い」をしていたので、中学校に通った記憶はほとんどないという。その後、本屋さんで働きながら定時制高校に通い、そのときの教員との出会いもあって、ご自身も定時制高校教員になられた。
 
 当時の定時制高校は活気にあふれていたが、その雰囲気は、75年を境にガラッと変わったという。その年の1年生から突如として校内暴力が始まり、廊下の蛍光灯が片っ端から割られたり、消火器がぶちまけられたりして、授業が成り立たない状況になった。これは何なのだろうと思った佐々木さんは、生徒に話を聴き始める。教師の立場を置いて、暴走族の集まる喫茶店などで話を聴いていると、さまざまなことを話してくれ、むしろ彼らのほうが正しいと感じるようになったという。そして、そこから見えてきたのは、ひとつには偏差値で輪切りにされるようになった学校のあり方であり、さらには、定時制の卒業生の仕事がどんどん減って、やりがいを感じるような仕事がなくなっていっているということだった。そのため、エリート意識で大学に行く人以外の大多数は、目標を持てなくなり、そこで生徒が荒れていた。しかし、90年代に入ると、荒れていた活気さえもなくなり、しらーっとしていく。佐々木さんは、学校に行く意義を感じられない「実質不登校」の生徒は、全体の8割はいると、学校現場での経験則から述べられていた。
 
 そして佐々木さんは、そうした状況は日本にかぎった話ではなく、世界的に生じているものだと指摘する。また、教育は世界中で民営化=商品化が進んでいる。教育商品は理想のイメージを売っているが、それは詐欺商品にほかならないという。それゆえ佐々木さんは、教育を根本的に疑うことが何より大事で、現実を見据えて具体的に運動していくことが必要だと話されていた。佐々木さんのお話は、とてもラディカルではあるのだが、何かあたたかなものを感じた。それは、佐々木さんが一貫して「下から目線」というか、現場から考えてこられたからで、たんに社会情勢を上から分析した考えではないからだろう。
 
 インタビューは、同じく定時制高校の教員を務めてきた山田潤さんとともにうかがった。この紙面では紹介しきれないが、山田さんと佐々木さんのやりとりは、抽象論ではなく、定時制高校の現場で感じてきた矛盾から教育を根本から問い直し、具体的に大人の働き方をどうするかを問うている。インタビュー本編は、インターネットで無料で全文を公開している。ぜひお読みいただければと思う。(山下耕平)