連載「ひきこもり時給2000円」vol.40
就活失敗を機に僕がひきこもっていたのは、今から20年前のことだ。あのとき、僕の親は何を考えていたのだろう。先日、母に直接聞いてみた。
――当時、どんな気分だった?
とにかく、腫れ物にさわる感じだったよね。「早くふつうの状態に戻ってほしい」という気持ちで。当時は、「ひきこもり」という認識はもちろんなくて、「いつまでも学生気分が抜けないんだろう」と思っていたんだよね。いつまで経っても社会に出ていけないのは、やっぱり私の育て方が悪かったんじゃないかって。
――自分が「これから病院に行ってくる」と言った日、きょとんとした顔をしていたが?
「病院に行ってどうなるんだ?」というのが正直な気持ちで。べつに病院に反対なわけではなくてね。「ひきこもり」という言葉も知らなかったし、「当時の君の状態」と「病院に通う」ということが、私の頭の中で結びつかなかったんだよね。それでその後、病院の先生から言われたのは、「圭太さんは程度としては軽いけど、まちがいなく『社会的ひきこもり』(でも軽いから早く治るというものではない)」ということと、「彼にとって居心地のよい家庭にしてください」ということのふたつ。でもそれほどていねいに話されたわけでもないし、半分は狐につままれたような感じだったかな。
――でも、そこから親の接し方が明らかに変わったよね?
うん、とくにお父さんは変わったと思う。
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