不登校新聞

307号(2011.2.1)

メンヘル時代の居場所論 木村衣月子(下)

2014年01月24日 10:35 by kito-shin
2014年01月24日 10:35 by kito-shin



誰かが受け止めるしかない


 前号にひきつづき、若者の居場所「NPO法人YCスタジオ」(島根県松江市)代表の木村衣月子さんのお話を掲載する。

――「人格障害」の場合、医療の知識は必要だと思いますか?
 一つの助けになるかもしれませんが、逆にジャマになるかもしれません。むしろ、その人の育ってきた境遇について理解することのほうがより大切だと思います。

 私が関わってきた、居場所でのわずかな経験からいうと、そういう人の場合、小さいころから自分を丸ごと受けとめてもらえる体験が足りなかったのではないでしょうか。さびしい、私のことだけ見てほしい、人とつながりたいという思いがとても強い。自傷行為にしても、他者への攻撃性にしても、そういうことでしょう。だから、一時しのぎに薬を利用しても、根本的には、誰かが丸ごと受けとめて、ときには振り回されることしかないんだろうと思います。

スタッフが傷つくことも


――スタッフが傷ついてしまうことは?
 ありますよね……。とくに最初の一撃は大変です。ふつうの感覚だったら、「これだけしてくれてありがとう」となるのに、逆でしょう? やればやるほど、攻撃される。何度か体験していくうちに、そういうものだとわかってくるんだけど、知らないで一生懸命やっちゃうと、まいってしまう。 私自身、傷つくこともあるし、あまりにしんどいときはいったん引きます。しばらく休めば、気持ちも回復してきます。スタッフにもキャパシティーがありますから、いろんな場所で少しずつ受けられるといいと思いますね。一カ所に集中してくると、しんどいです。

――でも、外に向かっているうちはいいですよね。
 そうですね。自傷のほうにいっちゃうのが、いちばん怖いです。ほんとうに危ないこともある。だから、そこは、医療につながってもらいたいですね。でも、場合によっては、どこの医療機関でも受けてくれないことがあって、だから頼りになる医療が、喉から手が出るほどほしい。
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