2018年7月11日、文科省は、学校復帰のみにこだわった従来の不登校対応を見直すため、「学校復帰」という文言が含まれた過去の通知をすべて見直す方針を明らかにした。通知が見直されれば、不登校対応の新たな方針が、全小中高校へ示されることになる。
文科省の「通知」とは、教育委員会を通してすべての小中高へ送付される行政文書のこと。「行政の意向」を現場に伝える手段となっている。これまで文科省は「学校復帰」の文言を含む通知を2003年から2016年8月にかけて4度、出していた。
その後、国会では不登校に関する初めての法律「教育機会確保法」が成立。2017年3月に策定された同法の基本指針では、同法とその付帯決議を根拠に「学校復帰のみ」にこだわらない新しい不登校対応が必要であることが明示された。なお、基本指針だけでなく新学習指導要領においても、新しい不登校対応の方針が示されている。
学校復帰前提の不登校対応が
しかし、学校現場において、依然として不登校対応の絶対的な目標は「学校復帰」であり、それは教員にも浸透されている。新しい不登校対応の指針について、教員からは「知らなかった」「これまでとは正反対の不登校対応で、どうしたらいいかわからない」など、とまどう声があがっている。
不登校の子らが通う「教育支援センター(旧・適応指導教室)」のガイドライン(試案)には、その設置目的が「学校復帰」と定められている。そのため、子ども自身が教育支援センターに通いたくても「学校復帰の意思がない」「短期間での学校復帰を約束しなかった」などの理由で受けいれを拒否するケースがあった。現在もガイドラインは変わっておらず、矛盾は残ったままとなっている。
また、学校復帰を目的とした教員の家庭訪問や電話がけにより、不登校の子が傷つく例は数多くあった。
基本指針と過去の通知に齟齬
こうした経緯を踏まえ「フリースクール全国ネットワークは」基本指針と過去の文科省通知が矛盾していることを指摘。これに対して文科省は7月11日の「フリースクール等議員連盟総会」において、過去の通知は「齟齬がある」とし、有識者会議などで検討していくことを明らかにした。
文科省の担当課は「今後の課題は学校復帰のみにこだわる不登校対応の改善だ」とも語っており、積極的に周知を図っていく方針。すでに横浜市では、教育支援センターの設置目的の要綱から「再登校」の文言が今年4月に削除されている。
ただし現段階では、どの有識者会議が通知内容を検討し、どんな文言で学校へ示されるかは未定。
教育機会確保法、秋に立法チーム
「超党派フリースクール等議員連盟」に対し、フリースクール全国ネットワークは通知の文言変更を含め6項目の要望を提出。「登校拒否・不登校問題 全国連絡会」からは「不登校で苦しんでいる子ども全体のことを考えた対応を考えてほしい」などの意見が出された。
これを受けて、議員連盟の馳浩幹事長は、秋の臨時国会で、教育機会確保法の見直しに向けた立法チームを設置していく方針などを明らかにした。(東京編集局・石井志昂)
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