不登校新聞

299号(2010.10.1)

論説「自己肯定感を奪うもの」多田元

2013年12月20日 17:43 by kito-shin
2013年12月20日 17:43 by kito-shin

 NPO法人子どもセンターパオが「シェルター丘のいえ」に居場所を失った子どもを緊急に受けいれる事業を開始して4年になる。利用者は14歳から19歳までにわかれているが、短い人生のあいだに身体的・心理的・性的虐待・ネグレクト、あらゆる形態の虐待によって、人間としての尊厳と価値を否定され傷ついている。「自分はいなくてもいい存在、いつか見捨てられる」と、底知れない不安と孤立感を抱え、生きる価値もないと思ってしまう子どもたち。

 
 そんな子ども・若者に「どんなあなたもすてきなあなた。あなたのままでいいんだよ」とメッセージを送りながら、子どものパートナー弁護士、スタッフらが、子どもとのパートナーシップによって、まずは安心してゆっくり休息できる生活の場をつくる。それがシェルターの目的である。しかし、その子どもらが直面する貧困問題、生きづらさを前にするとき、現代の日本社会のあり方に深い疑問を抱かざるを得ない。
 
 被害者側が少年審判傍聴、意見聴取を求めることができることとした08年の少年法改正から2年足らずのあいだで、審判廷の少年の面前で、被害者の親が「少年はクズ」「悪魔」「幸せになることは許されない」などの意見を陳述し、審判後に少年が精神異常を来した、という事例も報告された。子を亡くした親の感情は自然であり、誰も非難できることではない。しかし、少年の面前であれ、別であれ、その意見聴取は親自身の悲しみを増すことはあっても癒すことはないだろう。

 

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