厚生労働省が抗うつ剤の副作用に「自殺の恐れ」があることを「使用上の注意」に明記するよう製薬会社に指示を出した。これにより、医師が処方するほとんどすべての抗うつ剤(12種類)に自殺の危険性に関する副作用が明記されることになった。
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厚生労働省によると、SSRIをはじめとする抗うつ剤の多くには、「自殺の恐れ」について注記されていた。しかし、薬の種類によって表記がまちまちであったほか、記載されていない薬もあり、今回の改定では、統一された書式で、12種類の抗うつ剤すべてに、自殺の恐れが明記された。
現在、日本国内で承認されているSSRIは、「パキシル」「ルボックス」「デプロメール」の3種類(いずれも製品名)。今回の改訂では、3種すべてに「抗うつ剤の投与により18歳未満の患者で自殺企図のリスクが増加している報告がある」と表示されるようになった。
このうち「パキシル」については、もともと18歳未満の「大うつ病性障害患者」に投与することが禁じられていた。しかし、今回の改定では「自殺の恐れ」が「警告」として表記される一方、投与は「慎重に」とされ、「禁忌」からは外された。
これには、児童青年精神医学会からの要望が背景にある。同学会は、臨床現場でのニーズが高いにもかかわらず選択肢が狭まっているとして、2005年4月、厚労省に対して「パキシル」の18歳未満への使用禁忌を見直すよう、要望していた。また、「パキシル」は、06年1月から強迫性障害にも効能の範囲を拡大した。
「ルボックス」「デプロメール」は、うつ病のほか、「社会不安障害」にも効能があるとして、現在、市場を拡大している。
なお、アメリカでは、食品医薬品局(FDA)が04年10月、すべての抗うつ剤について、未成年が服用した場合、自殺を誘発する恐れがあるとして、医薬品警告としてはもっとも厳しい「ブラックボックス警告」を製品に表示するよう指示を出している。
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