第25回参議院議員通常選挙(7月21日投開票)に際し、『不登校新聞』では各政党にアンケートを実施。「不登校」に関する現状認識や「教育機会確保法の見直し」などについて、見解をうかがった。
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【Q1.不登校および不登校傾向に対する現状認識は?】
最新の文科省調査によると、不登校の小中学生の数は14万4031人。直近では、5年連続で前年を上まわっています。
また、日本財団が2018年12月に発表した調査によると、「不登校傾向にあると思われる中学生」(部分登校、別室登校など)は、中学生全体の1割、およそ33万におよぶとの結果が出ています。不登校のみならず、つらい思いを抱えながら学校に通っている子どもたちがいる可能性が推察されます。こうした「不登校」および「不登校傾向」の現状に対する認識について、貴党のお考えを200文字程度でお聞かせください。
【自民】
「不登校」は重要な政策課題の一つです。文部科学省の調査(平成 29 年度)によると、小中高等学校における不登校の児童生徒数は 19 万人を超え、とくに中学生は 31人に1人の割合です。
依然として高い水準が続いており、もはや「待ったなし」だと認識しています。虐待で不登校となっている可能性があり、また、不登校を経験した人は中高年になっても社会的に自立できない傾向があります。
こうした面からも、学校と家庭、関係行政機関と地域社会が総力をあげて取り組むべき課題だと考えています。
【公明】
不登校の原因は、いじめや友人関係などさまざまな理由があり、不登校はどんな子どもにも起こり得ることだと考えます。
公明党が推進して成立した教育機会確保法には、「個々の不登校児童生徒の休養の必要性」が明記されており、「つらかったら無理に学校へ行かなくてもいいんだよ」というメッセージが込められています。
引き続き、子どもや保護者、教師等へ休養の必要性について周知するとともに、不登校の子どもたちの教育機会を確保する支援が重要です。
【立憲】
文科省調査の不登校の小中学生は14万4000人、不登校傾向にある中学生は33万との数字の実態、子ども達の現実を踏まえた公教育のあり方を検討すべきだと考えます。
【国民】
「不登校」の子どもが14万人を超えるということは、つらい思いを抱えながら、なんとか学校に通っている「不登校傾向」にある子どもたちが多くいる可能性は、十分考えられると認識しています。
「不登校傾向」にある子どもたちが多くいることを前提に、支援策を進めるべきだと考えます。
【共産】
不登校が過去最多となり、不登校傾向の中学生が推計33万人という現状は、学校のあり方が本格的に子どもに合わなくなっていることを示しています。
その根本には、点数だけでなく態度まで対象とするような競争教育、「ブラック校則」「ゼロ・トレランス」などの異常な管理教育が、人権や多様性という時代の流れに逆行して強められてきたことがあります。
学校を個人の尊厳、子どもの権利を大切にする場に転換することが求められていると思います。
【維新】
不登校は、中学1年生以降に急増する傾向がある。不登校の原因は、いじめ、学業の不振、家庭内の問題、本人の問題などさまざまである。
小学校4年から6年のあいだに、長期にわたる欠席、遅刻早退、保健室登校などの兆候が見られるケースが多いことがわかっている。
不登校は未然防止が重要であり、兆候を示す生徒については、小学校において早期に対応するとともに、中学校へのていねいな引継ぎをすることが重要である。
【社民】
不登校の数が5年連続の増加傾向にあるということは、政府の対策が不十分であることの証左と考えます。そしてご指摘のように、不登校の背後に、多くの困難を抱えながら通学する子どもたちの存在を考えると、支援策の拡充は一刻の猶予もありません。
【Q2.不登校に今もっとも必要な具体的な取り組みは?】
2016年9月14日、文科省は「不登校を問題行動と判断してはならない」との見解を含む通知を全国の教育委員会に通達しました。本通知ではそのほか、「不登校は休養や自分を見つめ直すなどの積極的な意味を持つことがある」「根強い偏見を払しょくすることが重要」「学校・家庭・社会が不登校児童生徒に寄り添い共感的理解と受容の姿勢を持つことが重要」「不登校支援の目的は『学校復帰のみ』に捉われることなく、社会的自立を目指す」と明記されています。
今、そしてこれからを見据えた際、不登校に必要な取り組みとは何か。貴党がもっとも重要だと考えている施策について、200文字程度でお聞かせください。
【自民】
登校を目標にした指導をしないよう、すべての教師に文部科学省通知の周知徹底をするべきです。
そして、これからは、①スクールカウンセラーの配置などによる教育支援センターの機能強化、及び同センター設置の全国展開 ②不登校の子供に配慮した特別の教育課程を編成する不登校特例校の全国展開 ③学校外で学ぶ子どもへの支援 ④夜間中学の設置促進・教育活動の充実と就学希望者への支援 ⑤教育支援センターや不登校特例校との連携強化――などの施策に取り組むことが重要だと考えています。
【公明】
学校に登校できなくても、勉強したい子どものための多様な学びを支援することが重要です。
とくに、家庭の経済的負担が大きいフリースクールに対する公的支援や不登校の子どもたちを対象とした特別な教育課程を編成・実施する学校の設置促進、教育支援センターの更なる整備を推進すべきと考えます。
また、ICT を活用して不登校の児童生徒の自宅での学習成果を学校での成績として認めることができるよう、制度のあり方を検討すべきと考えます。
【立憲】
すべての子どもたちの学ぶ権利を保障することが重要だと考えます。一人ひとりに寄り添った、多様な学びを保障します。不登校の子どもとフリースクール等への支援を推進します。
【国民】
不登校に今もっとも必要な取り組みは、不登校を特別な問題行動と判断せず、不登校の子ども一人ひとりに寄り添い、子どもの意思を尊重した支援を拡充していくことだと考えます。
全国の小学校、中学校、高等学校にスクールカウンセラーやガイダンスカウンセラー等の配置を進め、一人ひとりの状況に応じた相談体制の充実を図るべきです。
また、必ずしも学校に復帰することを目的とするのではなく、一人ひとりの学ぶ権利と人権を尊重し、多様な学びを保障するため、フリースクール等への支援を推進します。
【共産】
文科省通知はご指摘のような前向きな変化があります。国会論戦を行なった政党の一つとしてうれしいことです。
その変化を踏まえた現実の施策の改善が重要で、①全自治体で公的な支援教室を設置し、学校復帰を前提としない子どもが安心できる居場所とする②行政とフリースクール、親の会など民間団体との豊かな協力関係を広げる③行政計画から「不登校ゼロ」「半減」といった不登校への否定的なまなざしを一掃する、の3点が重要だと思います。
【維新】
不登校の未然防止には、子どもが発する悩みのシグナルをいち早くつかむことである。
子どもだけでなく、取り巻く環境を含めて背景、原因の究明と解決までの手立てを考えて対処するなど、スクールカウンセラーなど専門職を交えた役割を明確化したチームで対処する。
担当教員が問題兆候のある生徒を抱え込んでしまうと対策が取れなくなるので、チームによる支援体制を周知徹底する。スクールカウンセラーが相談に応じる窓口をつくる。
【社民】
不登校児童に寄り添うため、学校や地域に専門の支援員などを十分に配置するとともに、学齢期に修学することができなかった方々に、普通教育を受ける権利を実質的に保障するための学級、学校の設置や援助を進め、地域での多様な学びのニーズの受け皿づくりが必要です。
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今回、「れいわ新選組」にも回答をお願いしておりましたが、回答の〆切期日までにお返事をいただくことができませんでした。また、漢字仮名づかいのみ編集部にて校正。(編集部より)
読者コメント
niko88
一般公開 私は中学校の養護教諭をしています。私の職場では、「教育機会...