不登校新聞

523号 2020/2/1

不登校校経験者が答えた親がすべきこと、してはダメなこと

2020年01月30日 12:48 by kito-shin
2020年01月30日 12:48 by kito-shin


登壇者:向かって右から2人目が丸山遥暉(はるき)さん

 本紙「子ども若者編集部」は2019年12月15日、東京都文京区にて、イベント「不登校経験者が答える相談会 親がすべきこと、してはダメなこと」を開催した。不登校経験者4人が檀上に上がり、会場からの質疑に答えた。来場者の質問は多岐にわたり、檀上者以外の子ども若者編集部メンバーも質問に答える場面があった。イベントの抄録を掲載する(編集・茂手木涼岳、撮影・瀧本裕喜、協力・本多寿行)。

* * *

(ショウタ) 本日の司会をつとめさせていただきます、子ども若者編集部のショウタと申します。

 まずは登壇者から自己紹介をさせていただきます。自分の趣味や、これまで親にされてうれしかったこと、イヤだったことを話していただきます。

(丸山遥暉・以下、丸山) 丸山と申します。気軽に「まるさん」と呼んでください。19歳です。中学3年の秋から、2年半ぐらい不登校でした。その後、通信制高校に入り、今は大学1年生です。

 僕は、スマホのゲームが大好きで、1年中ひたすらゲームしていることもあったほどです。今も大学に支障がない程度に続けています。

 一番つらい時期には、親に干渉されたくない気持ちが強くて、自分の部屋にひきこもっていました。

干渉を避けバリケードも

 僕の部屋はベランダに面していて、親が洗濯物を干すたびに毎日、僕の部屋を出入りするので、それが本当にイヤでした。ある時期は、机や重いものを引っ張り出して、ドアの前にバリケードをつくったこともあります。

 親にされてうれしかったことは正直、ありません。当時は自分自身のことで精いっぱいで、親の行動に目を向けていなかったんだと思います。

 ただ今になって思うと、親が私との関係に集中しすぎなかったことはよかったと思います。職場や地域の人との関わりや、弟たちの部活動の手伝いなど、親は僕の問題だけに没頭せず、いろいろと忙しくしていたんです。

 それが親に干渉されたくない僕にとってはありがたいことでした。

(あおい) あおいと申します。14歳です。今現在、絶賛不登校中でございます(笑)。ちょうど1年前の冬休み明けから不登校になりました。

 不登校になった明確な理由はなくて、中学校に上がって環境に慣れなくてすごく疲れてしまったり、部活がたいへんだったり、そういうことが重なったんだと思います。

 趣味はゲームやアニメなどの二次元です。アイドルや音楽も好きです。

 親にされてうれしかったことは、私の趣味を理解してくれて、いっしょにハマってくれたことです。逆にイヤなのは、小言を言われることです。

 「家事やってくれない?」とか「洗濯物、片付けといて」とか「もうできるでしょ」とか。できないから休んでるんだって話ですよ。そういうことを言ってくるのがイヤでした。



ゲームの時間管理するべき?

(質問者A) 中学1年生の子を持つ父親です。私自身は、「不登校でもいい」という覚悟はできているんですが、本人は家で1日中ゲームばかりしているんですね。

 時間を決めるなど、親がゲームの管理をしたほうがいいのでしょうか、それとも放っておいたら自分で管理ができるようになるのでしょうか、迷っています。

(丸山) 僕も親からゲーム時間の制限をされたことがありますが、うまくいきませんでした。

 一方的に「もうやめなさい」と言われると、反抗して、親の目を盗んでゲームをするなど、関係が悪くなる一方だったんです。

 僕の場合は、通信制高校で友だちができたことや、行きたい大学ができて、受験対策をしなきゃいけなくなったことから、自分から「仕方ないな」という感じでゲームの時間を減らしていきました。

 多いときは1日16時間くらいゲームしていたこともあったんですが、いまは1日1時間~2時間くらいですね。

(あおい) 私は、本当につらいときは、好きなことがいっさい、できませんでした。耳に音をいれるのもつらくて音楽が聴けないし、目に光をいれるのもつらいからスマホもいじれなかったんです。

 ほかにも朝起きたくなかったり、ご飯が食べたくなかったり……、とにかく何もできなくなってしまったんです。

 だから、「ゲームばかりしている」と聞くと、「その人は好きなことができていいな」って思います。気持ちが弱っているときでも、その人には夢中になれる命綱のようなものとしてゲームがあるんだと思うんです。

 「ゲームが好き」という気持ちがとっかかりになって人生が楽しくなることだってたくさんあるかもしれません。そういう命綱があってうらやましいです。

楽しいものが変われば

(大森) 檀上のメンバーじゃないのですが、僕も発言してもいいですか。子ども若者編集部メンバーの大森と申します。僕もずっと長い時間ゲームをやっていました。それはゲームがとても楽しかったからです。

 でもその後、別のものに興味が移っていきました。僕の場合は通信制高校に入り軽音部で活動したり、高校卒業後、社会人向けの農業学校で農業を学んだり。

 そういう活動をするなかで、自然とゲームの時間が減っていきました。お子さんも、今はゲームが楽しいからやっているんだと思いますが、別のものに興味を持てばそちらに気が向くんじゃないでしょうか。

(質問者B) 小学2年生の娘が不登校です。社会に出て何かをするために、必要最低限の学力は身につけてほしいと思っています。みなさんは学力の問題をどう解消しましたか?

(丸山) 不登校していたころは勉強が本当に嫌でした。でも今思うと、最低限の学力は僕も必要だと思っています。

 一方で、何か興味を持っていることがあれば、それを深めることが自然と学習につながっていくんじゃないかと思います。

 親御さんは、子どもが興味を持っていることがあれば、それを大事にしてあげたらいいんじゃないでしょうか。

(あおい) 私は歴史関係のゲームが好きで、ゲームを楽しむために歴史をもっと深く知りたいと思って、ネットを使って勉強をしたことがあるんです。

 今現在の私は、何一つ勉強に手をつけてないんですが、以前の経験があるから、また何かハマるものがあったときに、自然と自分で学習をすると思うんですね。

 だから「私は大丈夫」って思っています。お子さんも、何か興味のあるものがあれば、大丈夫なんじゃないかなと思います。

つらさの中身

(質問者C) 孫が不登校です。本人はどういう気持ちで、まわりはどういうふうに接してあげればいいのでしょうか。みなさんはつらかったですか。そしてそうした気持ちをどうやって克服したのですか?

(あおい) つらかったです。私の場合は、学校へ行きたくても行けなかったので、「なんでなんだろう、なんで私だけなんだろう」と。

 休み始めたとき、クラスメートに「仮病だろ?」と言われたことがあって、それが長いあいだ心に突き刺さっていました。「私はなまけ者なんだ、休んでいてずるいんだ」と、ずっと自分を責めていたんです。

 そして、それを克服できたかというと、今でもあまり克服できてないと思いますが、つらさのピークはすぎたと思います。時間が解決してくれたのもあるかな。

 あとは親とのコミュニケーションですね。私がグチをただ吐き出しているだけなのに、ずっと聞いてくれたり「そんなことないよ、あなたはがんばっているよ」と言ってくれたことが支えになりました。

(質問者D) 高校1年生の息子が不登校です。みなさんは、学校へ行けなくなって、やる気がなくなった状態から、今はある程度元気になられているんだと思います。

 そこでお聞きしたいのですが、親から見て、「この子はだんだん元気が出てきたな」と、わかるようなサインはあるのでしょうか。

(あおい) 元気になると、家にいるのがつまんなくなるんです。インターネットやゲームをしてても、おもしろくなくなっちゃうんですね。だから、自然と外に出ます。

 親にも「ヒマだ」「つまんない」って言い始めます。だからそういう言葉が出てくれば、それがサインかもしれません。

(永野颯季(さつき)) 檀上外から失礼します。子ども若者編集部の永野と申します。中学3年間不登校・保健室登校をして、今は通信制高校の1年生です。

 私は、不登校になった当初は親とまったくコミュニケーションを取ろうとしなかったです。何を話しても全部否定的な答えで返ってくるので、すごく落ち込みましたし、それ以来、何も話したくないと思っていたんです。

話をしてきたら、しっかり聞いて

 しかしあるとき、親が私のことを肯定してくれたことがあったんです。たぶん不登校関係の本を読んで勉強したんだと思います。

 それから、少しずつですが、私のなかに親と話をしたい、という意志が出てきました。自分に起きたことや気持ちを知ってもらいたくなったんです。

 だから親とコミュニケーションを取りたいという意志がちょっとずつ見え始めたら、それがサインなんじゃないでしょうか。そのサインを逃さず、しっかり話を聞いてあげてほしいです。

(ショウタ) そろそろ会も終了となります。本日はありがとうございました。(了)

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