不登校新聞

531号 2020/6/1

子どもの休みグセを「戻したい」と思ったら考えてほしいこと

2020年05月28日 13:00 by shiko
2020年05月28日 13:00 by shiko

 今回は、コロナ禍による長期間の休校措置で「子どもに休みグセがついてしまい、学校生活に戻れるか心配だ」というご相談にお答えしたいと思います。

 学校が休みのあいだ、子どもは、自分が嫌いな勉強にはほとんど手をつけず、ゲームやネットなど好きなときに好きなことばかりしている。

 親としては、きちんと学校生活に戻れるのだろうか、という心配があるのだと思います。

 そもそも「休みグセ」をどのように捉えたらいいのでしょうか。一般的には、休むということが習慣化してしまっている状態を表した言葉ではないかと思います。

 ポイントは、「休み」と「習慣化」です。

 まず、「休み」について考えてみます。不登校の子に対しても、学校を休みさえすれば「休息が取れている」と思われています。

 しかし、実際は休息を取れていないケースが少なくありません。むしろ、子どもは大きなストレスを抱え、つらくなっている場合もあります。

 今回のケースも、子どもにとってはみずから望んだかたちでの休校ではなく、いろいろな行動が制限されたなかでした。

 それを考えると、心も体も休めた子はどれほどいたでしょうか。自由に外出もできないままに、家庭が「がんばる場」になってしまうと、子どもにとって逃げ場がなくなってしまいます。

 もし、登校をしぶったとしたら、それはこの異常な状況を、子どもなりにがんばった結果として、「休み」を必要としているのかもしれません。

 次に「習慣化」についてです。なんの抵抗感もなく、あたりまえのように好き勝手(に見えるよう)な生活を送っているかどうか、ということです。

 私たちのフリースクールがある函館圏内では、地域に感染者が出たことで早めに休校措置が取られました。

 最初は、学校が休みになって喜んでいた子どもたちも、次々に学校行事が中止になったあたりから不安感が増したように見えました。

試行錯誤の結果

 それでも、なんとか家庭で不安解消に努めたり、楽しいことを模索したりして、試行錯誤を重ねたようです。そこにはたいへんな労力があったと思います。

 だから、相談にあるような子どものようすは、ようやく少し見えてきた自分なりの「新しい生活スタイル」なのです。

 そんななかで、学校が始まるから元の生活に戻るよ、と言われてもかんたんに割り切れるものではありません。

 子どもにとって、それは元に戻ることではなく、また新しくつくり変えなければならないことだからです。

 これらを踏まえると、登校再開がプレッシャーになっている子は少なくないと思います。さらに、子どもが学校へ行きにくいのと同様に、学校もまた疲れているのです。

 ある先生が「子どもはもちろんですが、先生方も疲弊しています」と話していたことがとても印象的でした。

 私は、学校自体にも動揺があるなかで、子どもに圧力がかかってしまわないかを危惧しています。

 社会を見ると、収束に向けて、これまでのものを一気に取り戻すような動きがみられます。経済的な面からは理解できることもありますが、子どもの育ち方もそれに合わせていいのでしょうか。

 また、教育の複線化や多様な学びも注目を集めているようですが、子どもたちのようすを見ると、まずは、すべての子が安心して学べるような環境をつくることが大事だと思うのです。(庄司証)

【プロフィール】
庄司証(しょうじ・あかし)1980年生まれ。「函館圏フリースクールすまいる」代表。不登校・高認・進学支援にとり組んでいる。

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