高一女子同級生刺傷事件
携帯電話が巷にあふれ出し、路上だろうと車内だろうとおかまいなしに日本人が喋りはじめたころ、そのあまりの傍若無人さに驚いた私は、その傍若無人さを、自分の周辺に一種のバリアーのようにめぐらした領域感覚にもとづく反応と見なし、「自己領域」という言葉を作って使い始めた。1996年のことだ。やがて、この「自己領域」をめぐる反応が主要因とみなしていいような出来事が目立ち始めた。
これから分析してみたい事件もその一つだと考える。
6月15日、横浜市の私立清心女子高校1年生の教室で、授業中に生徒が刃物で刺され、意識不明の重体にいたるという事件が起きた。
少ない情報のなかで注目したいのは次の二つである。
第一が、二人がくっついて隣り合わせに座るように配置された席の作り方である。刺された生徒Bは生徒Aの左隣に座っていた。
第二は、注意して報道を読んでいくと、生徒Aははたして、生徒Bだけを狙ったのだろうか、という疑問が生じてくることだ。なにより動機について、生徒Aが「生徒Bらが授業中にしゃべったり、自分の机の上に平気で物を置いたり勝手なことをするから」と述べている点である。この報道(朝日新聞6月17日)を信じるかぎり、生徒Aは「生徒Bらが」と言っているのであり、「生徒Bが」とは言っていないのである。凶行は、感情レベルにおいては、たんに生徒B個人にのみ向けられたものではなく、その仲良しの生徒たちへも向けられていたのではないか、と思えてくる。
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