不登校新聞

281号(2010.1.1)

映画監督 押井守さんに聞く

2013年12月20日 17:10 by kito-shin
2013年12月20日 17:10 by kito-shin


2010年、最初のインタビューは映画監督・押井守さん。押井さんは映画「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」「スカイ・クロラ」などで、社会が抱える問題を鋭く提起し、若者を中心に支持を集めている。取材したのは子ども・若者編集部の15名。
――作品には犬がよく登場します。私は犬に特別な思いがあるんですが、押井さんも特別な思いが?
犬がほかの動物とちがうのは、人間のそばに積極的にいようという意思を持っているところだと思う。猫もよく人間のそばにいるけど、猫は呼んでも来ないでしょ。共生はしても寄り添いたいと思っているわけじゃない。犬だけが人間を求めてくる。それはとても貴重なことだと思う。もちろん、それは人間がそうつくりあげてきたからなんだけどね。犬は大人にならない幼体成熟の動物で、子どもの状態をそのまま保存しているから、人といっしょに暮らせる。その意味では犬と人間の関係は猫よりも特殊で、人間には責任がある。僕も特別な思いがあるといえばある。

ただ犬や猫と付き合うのは覚悟が必要なことだと思う。長生きな犬でも20年ぐらいだから、だいたいは自分たちより早く死ぬ。そこらへんが犬や猫と暮らす意味なのかなって気もするけど、やっぱり死ぬとつらい。3年前にバセットハウンドのガブリエルが死んだ。新しい子たちもいるけど、いまでもぼっかり胸に穴が空いている。それは何があっても埋まらない。

でも、あるときから「それでいいんだ」って思った。胸に穴ぼこがあるから、あの子は僕のなかでまだ生きている。穴ぼこが埋まったら忘れちゃったってこと。忘れたら本当にあの子は死ぬんだ。僕が死ぬまで穴ぼこは開いていていい。そう思えて初めてあきらめがついた。
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