不登校新聞

281号(2010.1.1)

00年代と少年事件 吉岡忍さん

2013年12月11日 16:36 by 匿名
2013年12月11日 16:36 by 匿名


 少年事件の容疑者が逮捕されると、とっさに19歳だった私自身を思い出す。薄暗い部屋で写真を撮られ、10本の指すべての指紋を採取され、下着1枚になって身長や体重を測られたあと、机ひとつの取調室で、ごつい体格の無愛想な刑事と向き合った。

 私の場合は逮捕理由が政治的なものだったから、完全黙秘すると決めていた。私はありったけの友人知人の顔を思い出し、頭のなかで一人ひとりとおしゃべりした。ガールフレンド、デモや集会をいっしょにやった友人、私が脱走を助けた米兵もいた。私は取調官に何を聞かれても答えず、彼らとの無言の対話に夢中になった。それだけに熱中した。

 2000年代最初の10年、世の中を驚かせ、暗い気分にさせた少年や若者の犯罪は少なくなかった。17歳の少年が高速バスを乗っ取った事件(佐賀県/00年)、15歳少年が隣家の6人を殺傷した事件(大分県/00年)から始まって、小6女子児童がカッターナイフで同級生の女の子を殺害した事件(長崎県/04年)、16歳の少年が自宅に放火し、母親と弟妹を焼死させた事件(奈良県/06年)、さらには25歳の派遣労働者が秋葉原の路上で起こした無差別殺傷事件(08年/東京都)まで、私たちの記憶の層には凄惨な犯罪の影が道標のように打ち込まれている。
この続きは1ヶ月無料のお試し購読すると
読むことができます。

関連記事

「不登校の子どもが1歩を踏み出すときは?」『不登校新聞』代表が語る心が回復する4つの過程

622号 2024/3/15

「不登校からの高校選びに迷っている親へ」現役校長が語る高校選びの際に役に立つ4つの極意【全文公開】

620号 2024/2/15

「失敗しても大丈夫という体験を」子育てで親が一番大事にすべきこと

618号 2024/1/15

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)

624号 2024/4/15

タレント・インフルエンサーとしてメディアやSNSを通して、多くの若者たちの悩み…

623号 2024/4/1

就活の失敗を機に、22歳から3年間ひきこもったという岡本圭太さん。ひきこもりか…

622号 2024/3/15

「中学校は私にとって戦場でした」と語るのは、作家・森絵都さん。10代に向けた小…