連載「記者コラム」


 今号より、このコラムで、本紙スタッフ、理事が忘れられない取材を執筆していきます。

 忘れられない取材として真っ先に思い出すのが思想家・吉本隆明さんの取材だ。
 
 当時、私が19歳。新聞社入社から3カ月目。吉本さんの快諾をいただいた瞬間から周囲は大騒ぎになった。代表理事の奥地さんから「どうしてそんな大切な取材を勝手に決めてくるの」と言われ、編集長だった山下耕平さんから「俺ならちょっとビビるなあ」と言われたあたりから、ことの重大さに気がついた。19歳の私は吉本さんがどんな人かもよくわからないまま、雑誌で読んだ吉本さんのコラムを頼りに取材を決めてしまったのだ。
 
 取材メンバーは17歳~19歳の3名。いずれも多少の取材経験があり、当日は取材開始早々から異変に気が付いた。吉本さんのインタビュー対応がものすごくていねいなのだ。だいたい一つの質問に返答が一時間。ありがたい、ありがたいけど取材が前に進まない。3時間が経過したあたりで、メンバーの疲弊は睡魔に変わった。睡魔に耐えきれなかった1名はトイレに立つという掟破りも敢行。4時間をすぎた時、私がどうしても聞きたかった質問を投げかけると、親友は信じられないほど険しい顔つきで私を睨んだ。


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