連載「渡辺位さんの言葉」


 児童精神科医として、いち早く「不登校は個人病理ではなく、子どもの防衛反応だ」と訴えたのは渡辺位さんでした。渡辺さんの考えに触れ、不登校に関わるようになった人は多数います。本紙代表理事・奥地圭子さん、多田元さんもその一人。本紙で長く連載してきた石川憲彦さんは「私にとって渡辺さんは人生の道標、北極星だった」と語っています。渡辺さんはハウツーを徹底的に嫌い、つねに「問い」を投げかけるスタイルを貫きました。この連載は、渡辺さんが亡くなる直前まで関わっていた親ゼミの方々を中心としたリレー連載です。渡辺さんの言葉は、どのように息づいたのか。どんな意味を持ったのか。深めていきたいと思っています。

"造花を飾るんですね”


 渡辺先生は、たとえ話の名人でした。私たち親が、自分では気づかずにいることを、目覚めさせてくれる刺激的なお話をよくしてくださいました。

 子どもが学校に行かないことに寄り添ったつもりでも、家にいる子どもがゲームやパソコンばかりして、少しも勉強しないことに親御さんがイライラするという話をよく聞きます。かく言う私もそうでした。家で落ち着いてすごせるようになったものの、映画を見ることと好きなホラー小説を読むばかりの息子のことが気がかりでした。何か前向きなことをしてくれないだろうかと思っていました。

 

 
 あるとき、渡辺先生が「趣味の園芸を見ると不登校がわかる」とおっしゃいました。
 
 ある人が「毎年、花を咲かせたいのですが」と言うと園芸家は「花だって疲れますよ」と答えたそうです。
 
 渡辺先生はこの話に続けてこう言いました。


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