不登校新聞

387号 (2014.6.1)

渡辺位さんの言葉「死んだ猫は悲しくないんです」

2014年09月01日 12:36 by kito-shin
2014年09月01日 12:36 by kito-shin


連載「渡辺位さんの言葉」


 この連載は児童精神科医・渡辺位さんが亡くなる直前まで関わっていた「親ゼミ」受講生の親の方が執筆するコーナー。不登校運動の源流になっていった渡辺位さんの言葉は、どんなものだったのだろうか。

 

"死んだ猫は悲しくないんです”


  私は長男の「強迫性障害」の症状を何とかしたいと思って、親ゼミに通い始めた。

 参加2回目の親ゼミで、父親や兄弟間の関係が悪い、暴力・神経症、自殺未遂などさまざまな悩みが出された。黙って聞いておられたその後で渡辺先生が一言おっしゃった。

 「飼っていた猫が死んだんです。でも、死んだ猫は悲しくないんです」。

 そしてもう一言、「悲しいと思うのは死んだ猫の気持ちではなく、死んだ猫を見て感じる自分の気持ち」と続けられた。

 「?」が頭の中をグルグルまわるなかで私は思った。「でも猫は死にたくなかったかもしれないし、死にゆく自分を悲しんだかもしれない。絶対に猫も悲しいはずだ」と。

 それから数カ月、ふと気がつくと、渡辺先生のその言葉を考えていた。ご飯をつくりながら、掃除機をかけながら、子どもの強迫行動を涙目で見ながら。

 そのときも「もうなんでこんなに苦しんで強迫行動をする子どもに、自分は何もしてやれないのか」と、いてもたってもいられなかった。

 とにかく何かしてやりたいと思った瞬間に、すっと渡辺先生の言葉が重なった。
この続きは1ヶ月無料のお試し購読すると
読むことができます。

関連記事

第18回 寝屋川教師刺殺事件【下】

232号(2007.12.15)

最終回 家庭内暴力とは何か【下】

232号(2007.12.15)

第232回 不登校と医療

232号(2007.12.15)

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)

625号 2024/5/1

「つらいときは1日ずつ生きればいい」。実業家としてマネジメントやコンサルタント…

624号 2024/4/15

タレント・インフルエンサーとしてメディアやSNSを通して、多くの若者たちの悩み…

623号 2024/4/1

就活の失敗を機に、22歳から3年間ひきこもったという岡本圭太さん。ひきこもりか…