今回は、2008年7月5日に行なわれたシンポジウム「名ばかり管理職×フリーター」(主催・POSSE)において、須田光照さんの講演抄録を掲載する。現場の店長が声をあげ、大手一部上場企業で明らかとなった「名ばかり管理職」とは、どのような問題なのか。
私は現在、全国一般東京東部労働組合の書記次長を務める傍ら、NPO法人労働相談センターの専従スタッフとして、労働問題や労働組合づくりなど、さまざまな相談に応じています。そうした立場から「名ばかり管理職」という問題の実状についてお話ししたいと思います。
そもそも「名ばかり管理職」とはどのような問題なのか。労働基準法第41条に「管理監督者」という規定があり、これに該当する者については、1日8時間などの労働時間規制や残業代支払いなどの適用はあたらないということが明記されています。
では、どういう立場の人間が「管理監督者」にあたるのか。その要件については、経営者と一体となって経営に参画していることのほか、以下に3つの条件があげられます。
1つ目に出退勤の自由があるということ、2つ目に労務管理上の指揮命令権が与えられていることが挙げられます。これはたとえば、パートを増やすために新規採用をしたり、パートの時給を上げたりするなどを、自らの裁量でできる権限があることです。3つ目には、給与やボーナスなどの待遇において優遇されているなどの保障がなされている必要があります。
こうした「管理監督者」に該当する人は本来、取締役レベルなど、ごくかぎられた人たちのはずです。ところが、企業側は人件費削減などの理由で、現場の店長などに「管理監督者」の適用を拡大し、残業代を支払わないという問題が起きている。これが「名ばかり管理職」という問題なのです。
労働現場の実状は?
実状についてはまず、私たちとともに残業代の支払いを求め、紳士服販売の大手「コナカ」との団体交渉を続けている高橋亮さんの例を挙げたいと思います。高橋さんは開店の1時間以上前から出勤して閉店まで働いたあと、片づけや本社への売り上げ報告などをするため、帰宅はいつも深夜でした。14~15時間労働も、けっしてめずらしくなかったということです。
では、待遇はどうだったのか。高橋さんが店長の下の主任という役職に就いていたころの給与は残業代込みで35~36万円ほど。店長に昇格し、店長手当てがつくことになったため、残業代が支払われなくなったわけですが、それでも総額は36~38万円ほどでした。
つまり、「管理監督者」であってもなくても、給与や勤務体系などの待遇においてのちがいはほとんどなかったのです。
疑問を抱いた高橋さんは私たちとともに会社側と話し合いを持ったわけですが、会社側の回答は「そもそも、すべて店長の自由裁量でやったことで、長時間労働うんぬんの話しではない」というものでした。
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