前号に引き続き、今夏の全国合宿における講演抄録を掲載する。今号は、山下英三郎さん。
私はこれまで「スクールソーシャルワーク」の理念と取り組みを通じて、不登校の子どもたちと関わり続けてきました。ソーシャルワークといっても、あまり馴染みのない方もいらっしゃると思いますので、かんたんに説明します。「ソーシャルワーク」では、問題を「個人と環境の関係性の不適合状態」と捉えます。したがって、問題を解決するうえでは、個人と環境、双方に働きかけ、両者の折り合いをどうつけていくかということを模索していく支援のありかたです。ひと口に折り合いをつけると言っても、さまざまな方法があります。だから、不登校をした子どもをいかにして以前と同じ学校に戻すか、というようなことにのみ焦点を当てた短絡的なアプローチはしません。
基本的には、個人の持っている可能性を発揮できるようエンパワーすると同時に、環境が個人に適合できるよう調整をするという関わり方をします。たとえば、不登校の場合、個人がいくらエンパワーされても、環境がまったく変わらなければ意味がありません。つまり、環境としての学校が変わらないかぎり、問題は解決しないと考えます。
また、日本の社会ではえてして、個人の性格や気質に原因があると見なすきらいがあります。不登校も例にもれず、「ガマンが足りない」「ワガママだ」というように、子ども個人の問題に矮小化してしまいがちです。しかし、不登校の子どもは毎年11~12万人前後いるわけですから、原因を個人に帰結することでは説明がつかないのです。
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