今回は社会学者・芹沢一也さんにお話をうかがった。芹沢さんは「精神医学と犯罪」「少年と犯罪」をテーマに著書を出している。芹沢さんの眼からは、学校へのカウンセラーの配置や少年法の厳罰化などが、どのように映っているかなどをお聞きした。
――まず精神医療についてのお考えから聞かせてください。
日本にかぎらず、精神医療というのは治療システムの一つとしてではなく、「公衆衛生」や「治安対策」として発達してきた面が強いんです。
大正時代以降、「社会にはさまざまな"狂気”が存在しており、その狂気はいつ犯罪を起こすかわからない」という発想のもとに、精神医療が発達してきました。その結果、とくに戦後からどんどん病院に放り込む流れが生まれます。先ほど言った精神障害者による犯罪の「予防拘束」という治安維持の志向と「無能力者」に対する保護への志向、この2つの志向が相まって、日本は精神病患者大国になったわけです。いま日本の精神病院には約34万床の入院ベットがあります。世界一の病床数です。
一方、この10年程度で状況が変わってきた面もあります。古いタイプの閉じこめ型は減り、街中のクリニックが増え、うつ病や自傷行為が出ている人を中心に投薬治療が増えてきました。
――投薬治療はどうして増えたのですか?
米国では精神薬が大きなマーケットになっています。それが日本でも開拓されてきた、ということでしょう。学校や会社にも多くのカウンセラーが入り込んでいます。精神医療の視点が、学校現場に一度入れば医学的な視線で子どもが解釈され、問題が"発見”されます。以前であれば、たんなる「落ちこぼれ生徒」も人によっては病名がつき、投薬の必要性が主張されるでしょう。こうして"問題”が多く発見されれば、多くの人材や多数の薬が求められ、マーケットが連動していくわけです。
読者コメント