詩人で文芸評論家の吉本隆明が亡くなった。肺炎だったという。商業新聞は大きなスペースを割いて死亡記事を掲載したし、毎日新聞は社説にまで取り上げていた。彼が及ぼした、多領域での深い影響ゆえにであろう。

 私が吉本から直接、話をうかがったのは3度にすぎない。しかし、それ以外にもいくつかの集会で講演を聞いているし、数えたことはないが、私が読んだ彼の著作は200冊にものぼると思う。ちなみに、それらのうちから私がとくに影響を受けたものを3つだけあげるとするなら、『言語にとって美とはなにか』『敗北の構造』『初期歌謡論』ということになる。

 『Fonte』の読者であれば、まっ先に思い浮かべる吉本の言葉は、『この人が語る不登校』に収載された「コンプレックスにしてしまうのはつまらない」かも知れない。そこでは、次のように語られている。


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