児童養護施設を8年間取材 映画監督・刀川和也さん


 今回、取材したのはジャーナリスト・刀川和也さん。刀川さんは児童養護施設「光の子どもの家」を8年間取材し、映画「隣る人」にまとめた。今回は映画を撮り始めた経緯から、なぜ取材を続けてきたのかをうかがった。

――映画「隣る人」を撮ろうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

 そもそも僕はアジアプレス・インターナショナルに所属にしながら、東南アジアやアフガニスタンの子どもたちを取材してきました。フィリピンでは街で出会った子ども、インドネシアではストリートチルドレン、アフガニスタンでは空爆で家族を亡くした子どもたちなどです。一方で、2001年の池田小事件(※当時37歳だった宅間守が小学校に乱入し21名の児童・教員に死傷を負わせた事件)が起き、なぜこんな事件が起きるのだろうか、という問題意識もありました。

 多少、そうした問題意識ともリンクしますが、基本的には家族について取材したいという思いがあったんです。最初に惹かれたのは社会評論家・芹沢俊介さんの『「新しい家族」の作り方』(03年刊)。そのあとがきに触れられていたのが児童養護施設「光の子どもの家」だったんです。光の子どもの家・創始者の菅原哲男さんの著書を読み、手紙を書いたのがこの映画のスタートでした。

――舞台が児童養護施設なので映画のテーマは「虐待」なのかと思っていました。

 最初は僕も虐待への関心はありました。でも、「光の子どもの家」に行くと、そこにあるのはふつうの暮らしなんですね。子どもたちがいて、ご飯を食べて、学校へ行って、遊んで、寝て……。ごくごくふつうの暮らしがそこにある。「光の子どもの家」にはいくつかの家屋があり、そこに職員と子どもたちが暮らしていますが、どの家にも、それぞれの匂いがあるんです。家の匂いってありますよね。自分の家では気づかないけど、人の家に行ったときだけ、「あれ、なんかちがう」って思う匂い。それが「光の子どもの家」のどの家にもあるんです。


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