連載「渡辺位さんの言葉」


 児童精神科医・渡辺位さんが急逝されるまで関わっていた東京シューレ「親ゼミ」。その受付に、かならずと言っていいほど座っているのが山口幸子さん。20年以上、渡辺さんの言葉を聞き続け、いまなお印象に残っている「言葉」はなんなのだろうか。お話をうかがった。

 渡辺先生の「言葉」と聞いてすぐ思いつくのは「あるがまま」とか「ともに居る」という言葉ですね。私のなかでは、それらの言葉を「なんにもできない」という感覚で解釈しているんです。もちろん本当に「なんもできない」という意味ではありません。自分の都合で考えてしまうと……という枕詞がつくんですけどね。
 
 「なんにもできない」という感覚が、すっと胸に入ってきたのは、渡辺先生から、ガン患者のケアをされているチャブレン(病院つき牧師)の新聞記事を紹介されたときです。もう23年も前のことですが、紹介された新聞記事はいまだに持っています。記事で紹介された牧師さんは、患者のケアをするなかで言葉や自分の無力さを痛感するんだそうです。とくに病状が末期になればなるほど、それを感じる。そのなかで自分にできることは「ともに居ることだけに心を注ぐことだ」と思ったそうです。


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