◎一人暮らしの値段を計算する筆者・石井志昂



不登校・ひきこもりにとって有名な負のスパイラルがあります。

①あんな親はイヤだと思う
②一人暮らしをしたいと考える
③でも働くには自分の社会性がないと悩む
④でもあの親は……

このくり返しで悩む時期があります。これはもう教科書に載せたいほどの「不登校あるある」です。そこで、この悩みをやや緩和したいと思い、子ども若者編集部で方法を検討してみました。

結論から言えば、「親元で暮らす窮屈さ」への悩みに特効薬はありません。ただ、考えるに値する方法はあります。その一つが「一人暮らしの算段」をつけてしまうことです。

一人暮らしという逃げ道を選ぶには準備や具体的な算段が必要です。ここで悩むべきは「いくら必要なのか」と「どこで働くか」のみです。確実に言えるのは、一人暮らしには、自分の社会性、不登校歴、親子関係、これまでの失敗・成功、あるべき自分像などはいっさい考える必要がない、ということです。いまあげたテーマは人生を通して考えるテーマであり、生活費ごときに自分を問われる必要はありません(もちろん考えてもいいのですが)。



自分へのハードルを下げる


首都圏での一人暮らしには、やはり1カ月15万円が必要です(首都圏以外だとそれより安い)。生活費の目安は「家賃×3倍」。

月給15万円は、時給850円×週5日×1日8時間以上です。ただし、税金やら何やらがとられるので週6日にすれば安定することは安定します。

そこで、つい週6日勤務を申し込んでしまいがちですが、これが失敗のもと。いきなり週6日も働けば、かなりの人がダウンしてしまいます。ここに不登校うんぬんは関係ありません。どこの誰でもこれだけの量の仕事をいきなり始めれば潰れるものです。時給1200円以上のバイトも同様の結果をよく招いています。

もっともっと自分へのハードルを下げる。余裕が出てきたときだけ条件を上げる。それが鉄則です。

できれば月3万円のバイトから始めたいところです。月3万円ならば1日4時間×週2日、慣れてきたら月5万円(1日5時間×週3日)に上げ、最終的には月7万円(1日7時間×週3日)~9万円(週4日)を目指していく。もしも月7万円まできたら一人暮らしは具体的に見えてきます。ここから目標額15万円を複合的に達成させます。



まず家賃4万円以下の部屋を選び、生活費も自炊などで抑える。これで3万円分を浮かせます。家賃と生活費を抑えるとストレスを感じますが年間36万円=バイト423時間分の仕事だと思って、自分においしいご飯をつくりましょう。さらに親に頼み込んで3万円~5万円の仕送りをいただく。これも厳しい条件に見えますが5万円=700時間分の労働が浮くのですから、ここが勝負どころです。

親には「一年だけチャンスをください」という呪文を唱えて迎え撃ちましょう。これで目に見えるお金+目に見えないお金で月15万円達成。まずはこれを1年程度続け、仕送りなしでもいけるシフトに変更していくのが現実的でしょう。もちろん月12万円を維持できてからでもいいです。さらに上級者になれば、生活保護や障害者年金についてきちんと勉強し、それらも絡めて、より労働時間を削って一人暮らしを可能にさせる道もあります。

また、一人暮らしを始めるには、日々の生活費だけでなく、新しく部屋を借りるための資金や病気になったとき、親や祖父母などを頼れるというツテも絶対に必要です。



自由の値段と親元で暮らす




ということで総括しますと、一人暮らし、つまり自由になる値段は年間180万円(月15万円)です。高いですね。ただ生きるだけでこんなに金が必要なことに怒りが湧いてきます。そして「そんなに高いなら家でガマンする」という結論もアリです。ひきこもり名人・勝山実さんはこういう計算をし抜いたうえで「親元で暮らす大切さ」を説いています。

当然のことながら、自由への道は家の中にも広がっています。親に感謝し、家庭円満を愛し、かぎりある仕事を他人に譲っていく。そういう道も当然あるわけです。そして、家庭内でイライラすることがあっても、それこそが年間180万円分の精神労働だったわけです。知らず知らずに私たちは高額の精神労働をしていることに気がつきます。精神労働をするか、目に見える労働をするか、ぜひ自分にあった不登校ライフを満喫してほしいと願うばかりです。

(東京編集局・石井志昂)