9割近くが「不登校授業」なし


 不登校研究会は、医者が医者になるまでに不登校をどう学んでいるのかを調査した。今回は調査をとりまとめた不登校研究会の朝倉景樹さんが、調査結果から見えてきたものを執筆した。

調査始動の経緯

 不登校経験をしているメンバーが多いシューレ大学には不登校研究会という研究会があります。不登校研究会では、これまで不登校の歴史、アジアにおける不登校研究のため韓国、台湾などへの調査旅行などをしてきました。研究活動は「医療と不登校」というテーマも持っており、不登校を理由に医療にかかったことのある子ども本人とその親へのアンケート調査も行なってきました(『不登校と医療』2002年)。

 これらの研究活動や日常で見聞きすることからも、現在も不登校を理由に医療にかかる子どもが多くあり、過剰医療など不適切な診療を経験する子どもも少なくないと感じてきました。そこで、医師は不登校についてどのように学んで診療をしているのかを調査・研究することにしました。

調査の進め方


 調査は、調査票を使った郵送調査、大学のカリキュラムを詳細に記したシラバスの調査、医師への聞き取り調査の3種類の調査を2010年から2011年にわたり約1年半掛けて行ないました。

 調査票による郵送調査では国内のすべての医大・医学部(80校・学部)を対象に、不登校についての教育やインフォームドコンセントについてを訪ねました。回答率は42・5%。

 一方、全国の医大・医学部(80校・学部)のシラバス調査では91・3%のシラバスを調べることができました。この調査では、実際の講座の設計、時間数、テキストなどを調べました。

 聞き取り調査では、大学病院などで研修医の指導をしていた医師や児童精神科医に、大学での不登校についての教育、研修で、どのように不登校について学べるのか、研修後どのように新しい知見を得ていくのかな どについて聞きました。



調査結果


 ①不登校

 調査票調査によると、不登 校についての授業が1コマでもあるかどうかについては、38・2%の大学が「ある」と回答しました。しかし、調査票調査より倍以上の資料が集まったシラバ ス調査では、不登校についての授業がある大学は12・2%でした。不登校について取り上げる授業がある場合でも、せいぜい1コマであることが多く、1コマ のなかで不登校やいじめ、摂食障害、リストカットなどの自傷行為などほかの事柄といっしょに取り上げるということも少なくありませんでした。不登校につい ての授業時間を増やす予定の有無も調査票調査で調べましたが、1大学も増やす予定はありませんでした。不登校についての授業ではかならずしもテキストを 使っているわけではありませんが、小児医学などの講座のなかなどで不登校を取り上げるときには医学書院の『標準小児科学』などが使われているようでした。 この本の不登校の記述では、不登校は病気ではなく、つまり不登校自体は治療の対象にならないということが書かれています。

 ②インフォームドコンセント

  2002年にとりまとめた『不登校と医療』でわかったことの一つは、本来あるべき、子どもや親に対する説明や診療方針についての同意を確認する、いわゆる 「インフォームドコンセン」トがなされていないことが多いということでした。そこで、今回もインフォームドコンセントについても調べました。調査票調査で は9・1%の大学が教える授業が「ない」と回答しました。授業時間数も6割以上の大学が5時間以内でした。約1割の大学が今後授業を新設あるいは増やす予 定だと回答しました。1997年の医療法の改正でインフォームドコンセントは「努力義務」となり、国際法上も2006年のジョグジャカルタ原則に明記され ています。患者の権利保障の点から、このような基礎的で重要なことが教えられていない大学があるということは由々しき状況です。

学ぶ機会がない



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