フリースクール、夜間中学校の合同議員連盟総会のようす。
左から2番目が座長・馳浩議員
「義務教育の段階に相当する普通教育の多様な機会の確保に関する法律案」が大詰めを迎えている。8月11日、フリースクールと夜間中学校の議員連盟が総会で「条文案」を提示。現在は修正が行なわれている。全国各地で市民集会も開催され、賛否含め議論が活発になっている。
同法案が成立すると、不登校の子どもと保護者の現状はどう変わるのか。もっとも注目されているのが「個別学習計画」だ。個別学習計画とは、不登校の子の保護者が民間団体や教育委員会からの支援を受けて作成する学習計画のこと。審査・認定は教育委員会が行なう。修了すれば保護者は就学義務を履行したものとみなされる。
個別学習計画については議員らを中心に、法律上、その必要性を訴える声がある一方、フリースクール、親の会関係者からは個別学習計画そのものへの懸念が当初より上がっていた。この点については8月11日の議連総会でも議員からの質疑が集中した。
畑野君枝議員(共産党)は「学校や勉強で疲れ切った子どもに、親や教育委員会が個別学習計画を使って勉強を迫るようなことがあれば、子どもはさらに追い詰められる」と指摘。馳浩議員(自民党・座長)は「子ども本人の意思が十分に尊重されるよう柔軟な対応を求めていく」と回答。根拠に挙げたのが「(子ども本人の)意思を十分に尊重しつつ」(第二条)の文言。神本美恵子議員(民主党)も「子どもの権利条約の趣旨に則り」(第一条)という文言を引き合いに出し「この一文が現場で齟齬が生まれた場合の歯止めとなる」と主張。文科省・前川喜平審議官は、不登校の子に対して文科省はどんな状態であれ学校復帰を前提とした対応しかとれないが「学校復帰を前提としない特例を認めることに、この法案の意義がある」と言う。
これ以上、追い詰めない
同法案はかねてより「画期的」だと推進する意見が親の会やフリースクール関係者にある一方、「教育の民営化による格差拡大」「教育委員会による家庭への直接介入」などの懸念から法案に反対する、または今国会での成立は拙速な動きは避け、きちんと議論すべきという声もある。ただし、意見が対立していても「これ以上、子どもは追い詰めない」という問題認識は立場を超えて共通している。法案の是非を問う意味でも、法案が成立した後でも「これ以上、子どもは追い詰めない」という問題認識に立った検討、修正、運用は今後も必要。再度の条文修正案が提示されるのは9月上旬。議員連盟は今国会の上程を目指している。 (石井志昂)
■編集部より…法案に関するご意見、ぜひ、本紙東京編集局までお寄せください。連絡先は本紙題字下に。
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