「多様法案」の基本理念は「一人ひとりの状況に即した多様な教育機会の確保」。原則として、個人の「教育機会の確保」であり、居場所を支援するものではない。不登校など十分な普通教育を受けていない者が対象。多様な教育を選択できるよう保護者に課せられた「就学義務」の特例(みなし規定)などを定めた。
 
 就学義務とは保護者が子どもに対し、小・中学校9年間の教育を受けさせる義務のこと。憲法26条、教育基本法第5条、学校教育法第16条~第17条で規定されている。教育を受けさせる場を「小・中学校」と具体的に規定しているのは学校教育法第17条のみ。フリースクールやインターナショナルスクールに就学することでは就学義務を履行したことにはならない。
 
 ただし、規定されているのは保護者の義務であり、子どもが学校に通う義務ではない。また、保護者は就学義務が課せられているからといって子どもに登校を強制してはならない。子どもは憲法26条に規定された「教育を受ける権利」などを持っており、保護者や国などは子どもに適切に対応する義務がある(最高裁大法廷1976年5月21日判決)。
 
 国や教育委員会などは、子どもに登校を強制することはできないが、保護者には就学義務が課せられているため「学校復帰(就学義務の履行)を求める対応以外はできない」との見解を示している。
 
 「多様法案」は就学義務の「特例(みなし規定)」を定めている。具体的には保護者が申請した個別学習計画が教育委員会に認定されれば「就学義務を履行したものとみなす」というもの。当然ながら個別学習計画の申請は保護者の権利であり、義務や責務ではない。こうした特例(みなし規定)が認定された保護者には、国や教育委員会が学校復帰ではなく「個別状況に即した支援をとることができる」と馳議員らは見解を示している。対象者は「不登校12万人中1万人程度だろう」と馳議員は個人的な見解を示している。
 
 なお、「多様法案」が仮に成立したとしても、不登校の子に対する文科省の「学校復帰前提」の基本姿勢は変わらない。今後の不登校対応については「不登校に関する調査研究協力者会議」が検討しており、先月8月26日に中間報告が出たところである。(石井志昂)