不登校新聞

326号(2011.11.15)

制作から28年後、戸塚ヨット映画、上映開始

2013年05月30日 11:11 by kito-shin
2013年05月30日 11:11 by kito-shin




日常的な殴打、暴行、監禁を再現


 戸塚ヨットスクールを題材にした「スパルタの海」のロードショーが10月29日から始まった(シアターN渋谷にて)。「スパルタの海」は1983年制作の映画だが、戸塚ヨット事件を受け、上映が中止されていた。

 「スパルタの海」の放映権は東宝東和が持っていた。2005年に戸塚ヨットスクールを支援する会(会長・石原慎太郎都知事)らの有志で結成された『「スパルタの海」管理委員会』が権利を購入。2007年から特別企画の一作品として紹介され、今回、本格的なロードショーが始まった。プロデューサー・石川順氏(プライムウェーブ・ネクシード)は「この映画はエンタメとしておもしろい作品。封印されるにはもったいなかった」と語る。版権を購入した『「スパルタの海」管理委員会』のメンバーは、戸塚宏氏への一審判決(懲役3年執行猶予4年)と二審判決(懲役6年)の差に触れ「裁判官ではなく、みなさまに評価していただきたく購入しました」と語った。

悪質かつ残忍な犯行


 戸塚ヨット事件は1980年~82年に起きた事件のこと。名古屋高裁の判決によると、入所に伴う殴打や連行。日常的なヨットの舵棒や竹刀での殴打。額をコンクリートに叩きつける、足蹴り、海へ突き落すといった暴行。手錠や格子戸付きの押入れへの監禁などが行なわれた。なかには当時15歳の男性が格子付き押入に監禁された際、夜尿をしたという理由から「1日中便器に頭を突っ込んどれ」とコーチらに脅迫を受けた。その後、男性は約1時間、男子用便器に頭を入れる姿勢をとらされ、その頭の上から小便をかけられるという虐待を受けたという事実も認定された。こうした暴行に対し、名古屋高裁は戸塚宏氏らに懲役6年などの判決を言い渡した(02年に判決確定)。高裁は「組織的集団的な犯行で、無抵抗の合宿生に対し情け容赦なく、個性を無視して加えられる悪質かつ残忍な犯行である」と断定した。

 映画「スパルタの海」は実際の場所でロケを行ない、暴行のようすも再現されている。

 戸塚宏氏は封切り上映のあとに舞台挨拶で登場。映画内で登場する暴行シーンについて「実際はこんなもんじゃない」と語り、体罰については「みなさんはなぜ体罰が悪いのか考えたことがありますか」と持論を展開した。

現在も運営中


 現在も戸塚ヨットスクールは運営している。戸塚ヨットHPによると受けいれ期間は原則1年間。入所のためには、入校案内の熟読と面接のほか、1年間で467万円(入校金315万円、入校時預り金20万円、生活費・毎月11万円)が必要。


 また2008年には戸塚ヨットから逃げ出した児童を児童相談所が保護。その後立ち入り調査などが行なわれた。09年、10年にも逃げ出す訓練生が相次ぎ、09年10月19日には戸塚ヨットに連れてこられた18歳の女性が3日目に同所で飛び降り自殺した事件も発生した。

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