2006年は、子ども、若者たちにとって、とりわけ、不登校、引きこもりにかかわる人たちにとって、どんな年だったのだろうか。
一年を一文字であらわす世相漢字に「命」が選ばれた。この字は、皇室の男児誕生ということから推した人も多かったようだが、私は、別の意味で子どもの「この1年」を考えるとき、「命」という一字がぴったりだと感じている。子どもの命が苦しみ、命が奪われ、命をみずから殺し、命がけで生きづらさやもう生きられない、というメッセージを社会に訴えた年だったと思うからだ。
それでは、どんな年だったか7項目に分けて見てみよう。
教育基本法改正
教育におけるもっとも大きなできごとは、教育基本法の「改正」が決まったことだろう。小泉政権からとって変わった安倍政権は、何が何でも、教育改革の目玉としての教育基本法「改正」を通したかった。4月、「与党の教育基本法改正に関する協議会」は、具体策をとりまとめ、国会に提出した。
この与党案に「愛国心」が盛り込まれたことは大きく報道されたが、問題はそれだけでなく「個人より国家が尊重される」という教育基本法の本質を変えるほどの法案であった。「教育への不当な介入」の意味も変質させられ、権力を縛る意味は後退し、権力側がつくる法律に服して行なわれる。5項目の「態度を養う」ことが教育の目標に挙げられ、若い人などからも「身につけたふりをするの?」などの批判を受けるほど「教育の憲法」にしては、あまりに問題の多い内容であった。
6月の通常国会では成立しなかったものの、「教育改革」を第一に掲げ新首相になった安倍晋三氏は、ついに11月16日、衆議院本会議で、野党欠席のまま強行採決をした。教育基本法などについて「国民の意見を聞く」という趣旨で1回1千万円もかけて行なわれてきたというタウンミーティングがじつは「やらせ」だったと発覚したが、なりふりかまわず、12月15日参議院も賛成多数で可決させ、1947年より59年間続いた教育基本法は、教育的というよりは政治的に改定されてしまった。
この教育基本法の流れが、2006年の教育の流れを象徴するものであったといえる。
取り締まりの強化
まず、子どもの指導に関して、力による取り締まりの強化がすすんだ。
「奈良県青少年補導条例」の制定はその一つである。飲酒、喫煙、深夜徘徊などの不良行為が26項目にわたって規定され、そのなかには「正当な理由なく、義務教育諸学校を欠席し」とあり、不登校もまた補導の対象となった。いったい誰が「正当」であるかどうかを判断するのだろうか。
また、6月には国立教育政策研究所と文科省が「出席停止」をふくむ新たな生活指導の対応をとりまとめた報告書を発表した。提言の中で流行を見始めたのが「ゼロトレランス」方式である。ゼロトレランスとは「寛容さゼロ」の意で、小さな規則違反も許さず厳罰に処すことを表し、米企業の品質管理方式を学校教育に持ちこんだものだ。
少年法も厳罰化の流れをとりいれ、2度の国会で少年法改正案は審議入りをした。この改正案のポイントは、少年院送致の下限(14歳未満)撤廃、ぐ犯少年に対する警察・検察官調査権限の拡大などで、少年司法の理念が揺らぐほどの改正案であった。
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