不登校新聞

423号 2015/12/1

【公開】いじめ地域格差30倍、文科省調査に疑問の声が

2015年12月08日 16:14 by shiko


 1000人当たりのいじめ認知件数が都道府県によって最大で30倍もの開きがあることが文科省の調査でわかった。文科省は岩手県矢巾町のいじめ自殺を受け、各自治体にいじめの再調査を指示。例年より都道府県格差は縮まったものの、はたして正確な実態が把握できているのか、依然、疑問の声を呈する声は根強く上がっている。

 1000人当たりのいじめ認知件数は全国平均で13・7件。都道府県別で見ると佐賀県が一番低く2・8件。一番高いのは京都府で85・4件。30倍の差が開いた。このほか隣県どうしで発生率に差が開くケースも散見された。宮城県(1000人中/69・9件)と福島県(1000人中/4・1件)では17倍、千葉県(1000人中/39・9件)と埼玉県(1000人中/4件)では10倍の開きがあった。
 
 こうした地域格差は「地域の特色ではなく正確に実態把握できていない現れだ」と教育ジャーナリスト・青木悦さんは指摘する。青木さんは「30年間、全国の教育現場を渡り歩いているが、子どもたちの置かれた環境にそれほど大きな差を感じたことはない。画一的な学校システムのなかで子どもは同じように苦しんでいる」と言う。
 
 文科省も実態把握に関しては問題意識を抱えており「いじめの認知件数は、少なければいい、多ければ問題という単純なものではない。少なければ潜在化したいじめを見逃している可能性も考えなければいけない」との見解を以前から示してきた。
 

乱高下するいじめ件数

 
 いじめに関する調査の「正確性」に疑問符が投げかけられているのは地域格差の結果だけによるものではない。今回の調査でも4割以上の学校が「いじめゼロ」を報告。岩手県矢巾町では、いじめ自殺に至った子どもが再三に渡り、学校へいじめを訴えていたが、教育委員会からは「いじめはゼロ」と報告されていた。いじめ認知件数の「総数」も定義変更や再調査などで最大6倍に跳ね上がるといった乱高下を見せている。
 

いじめ解消率 9割台を推移?

 
 さらに不登校経験者たちから強い疑問の声が上がっているのが「いじめ解消率」。学校が「いじめを解消した」と報告する件数が毎年90%付近を推移している。しかし、「先生がいじめに介入してむしろこじれた」(21歳・女性)。「先生にいじめを相談したが、なんの解決にもつながらなかった」(18歳・男性)など「実際は学校がいじめを解消できていないことのほうが多い」と話す不登校経験者は多い。
 
  *  *  *
 
 国立教育政策研究所は、いじめは「どの学校でも起きるもの」という前提に立ち、アンケート調査の際は「無記名式のアンケートが重要だ」と指摘する。匿名性が守られていないアンケートでは子どもが安心して事実を書くことができないからだ。いじめへの実態把握は、すぐにできる方策をまず実施すること。そして、いじめを「人間関係のこじれ」などの問題としてのみ捉えず、子どもの置かれた環境から捉え直される必要があるのだろう。(石井志昂)

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