継続審議となっている共謀罪法案が、この臨時国会で天王山を迎えようとしています。「国連越境組織犯罪防止条約」を国内で法制化するために共謀罪が必要だと政府は主張しますが、日弁連は、この立法なしでも条約批准は可能だとの意見を表明しています。今日は、共謀罪のもつ危険性と背景について述べます。
共謀罪とは
法案で創設される共謀罪は、「団体の活動として」犯罪を実行しなくても、長期4年以上の懲役に当たる犯罪(共謀したものを)処罰の対象としています。その数は619以上。窃盗、横領、詐欺、殺人……、みなさんが思いつくほとんどの犯罪が対象となります。
この共謀罪の問題をひとことで言うなら、近代刑法の基本原則に真っ向から対立するところにあります。邪悪な考えをもつものを処罰するという古い刑罰が、国家の恣意的な処罰を生んできた反省に立って、近代刑法は、客観的な犯罪行為があって、はじめて処罰がなされ(行為主義の原則)、刑罰の程度は、社会に与えた損害に従う(侵害性の原則)、犯罪とされる行為は、あらかじめ法律に明示されねばならない(罪刑法定主義)などの原則です。犯罪は、客観的な実行行為があって、結果が発生して初めて処罰できる、という原則です。
ただし、重大な犯罪については、実行行為に着手すれば、結果発生の客観的危険が発生するので、処罰できます(未遂罪)。さらにとくに重大な犯罪についてきわめて例外的にその準備行為を処罰する。たとえば「殺人予備」などです。未遂・予備の処罰ですら例外とする基本的な刑法の原理・原則は国の暴力である刑罰を恣意的に発動することを抑止するためにあります。しかし、いま、この原則からはずれ、共謀罪のように犯罪にいたるプロセスの初期から処罰を早期化しよう、侵害結果ではなく、犯罪発生の「危険性」を処罰する方向にいこうとしているのです。
一見、これは犯罪の未然防止のためにいいことだと考える方もあるかと思いますが、じつは、社会にとってきわめて危険な方向だと思います。
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