
連載「親の気持ち子の思い」
私には今年29歳になった一人息子がいる。小、中、高、大と、とことん勉強嫌いで親を悩ませ、バイクが好きで親を不安がらせた。しかし、理学療法士になりたいといって、25歳から急に勉強をはじめた。いま、専門学校の4年生。30近くなって、まだ学生の身だ。
この息子が中学校1年生のときに大変な反抗期で、朝から母親である私をにらみつけ、あいさつはおろか、1日中ほとんど口を聞かなかった。何を言っても何を聞いても返ってくる言葉は「別にー」「だってー」「うっせえなー」だけ。
そんな彼がある日、青い顔をして、目をひきつらせ、私のほうにまっすぐ歩いてきた。バスケットボールをやっていて、身長はすでに私を越していた彼に、私は「殴られる」と直感した。まったく子どもを信用していないのである。今日は夫もいないし、あんな大きな図体で殴られたらたまらないと思った私は、息子が近づいてきたとき、ちょっと横に逃げた。息子は殴らなかった。そして、私の横をすり抜けるとき、一言、低い声で言った。
「友だち、できねぇー」
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