連載「ひきこもり時給2000円」vol.22
先日、母に言われた言葉がある。「あの日、面接に行く圭太の背中が、小さく見えたんだよね」。「あの日」とは、もう19年も前。僕が大学生当時の就職活動の話だ。
ぼんやりとマスコミらしきものを志望していた僕は、縁あって名古屋にあるテレビ局の面接を受けることになった。さあこれから出発となって身支度を整えたときに、家を出る僕の背中が、母の目には小さく見えた。その日、同じことを僕にも告げたらしい。僕は覚えてないけど。母は「なんで私はあのとき、あんなことを口にしてしまったのだろう……」と、その日のことをいたく後悔していたけれど、僕はそう言われても、腹が立ったりとかはとくにしなかった。むしろ「ああ、そうか」と、その言葉に心から納得したぐらいだ。なぜなら、当時の僕も母とまったく同じことを考えていたから。
僕が就職活動をした1997年の6月。鏡に映ったリクルートスーツ姿の自分を見て、僕はあるひとつのことに気づいた。
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