不登校新聞

432号 2016/4/15

不登校の歴史 第432回 格差社会と子どもの貧困

2016年04月11日 12:14 by kito-shin
2016年04月11日 12:14 by kito-shin


 2010年ごろ、社会の格差が広がり、とりわけ20代、30代の若者にはつらい状況をもたらしていた。非正規雇用者の増加、リストラ、困難な再就職など雇用状況は不安定化していた。
 
 2010年12月、茨城県取手市で、27歳の男性がナイフを手にバスへ乗り込み、無差別に乗客を傷つける事件が起きた。通勤・通学時のバスはたちまち地獄と化した。事件の1年前、青年は会社からリストラされ、そのころから事件を計画。事件当時は父と二人暮らし。お金は持っていなった。青年は事件後、「誰でもよかった。自分の人生を終わりにしたかった」と語っている。
 
 取手市の事件からおよそ10日前、筆者は不登校経験者で30歳の青年の葬儀に参列していた。青年はある会社をリストラされたのち、再就職先を探して2年間で100社以上もの会社に応募。希望を見いだせず、ついには自ら命を絶つことになってしまった。彼の例はどこにも報道されていない。
 
 このような世情で、「不登校」と「貧困」がつながっていく例がめずらしくなくなっていった。
 
 フリースクールや親の会への相談のなかには、一人親家庭で、昼も夜も働かざるを得ないため、「子どもが学校へ行ってくれない」という悩みが増えてきた。一日中、小さな子どもが家で待っている場合も多かった。一方、「私の母が来てくれています」など、祖父母の協力を得て、かろうじて生計が保たれている例もあった。しかし、それは同時に「孫と祖父母の関係が悪い」という相談につながることも多かった。
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