不登校新聞

434号 2016/5/15

身の回りにある“寛容さ”が減りすぎている ひきこもり時給2000円

2016年05月12日 23:35 by kito-shin
2016年05月12日 23:35 by kito-shin


連載「ひきこもり時給2000円」vol.28


 「まあ、食べてみて甘かったらあんまん、そうじゃなかったら肉まんね」
 
 僕が中華まんを買うと、お店のおじさんはいつも決まってこう返してくる。僕はこのやりとりが好きで、中華まんが欲しいときは、すこし距離の離れたデイリーヤマザキまで歩く。もっと近いところに、セブンイレブンやローソンのお店だってあるのだけれど、どうもヤマザキのほうが好きなのだ。だってこのやりとり、ここのお店じゃないとできないんだもの。セブンやローソンだと、何かがちがうんだよね。
 
 肉まんをレジ袋に詰めてくれるおじさん(この人がオーナー)といっしょに、「甘かったらあんまん、そうじゃなかったら肉まんね」をハモる。ふたりで笑う。オーナーの奥さんもご主人とまったく同じことを言う。僕は思わずほっこりしてしまう。でも、お店のほかの従業員さんはこれを言ってくれない。だから、レジにおじさんもおばさんもいなかったときには、少しがっかりしてしまう。お店に行ったけれど、何も買わずに帰ってくることもある。ほかの従業員さんもあれをやってくれればいいのにね。まあ、それを口に出して言ってみたことは、まだ一度もないんだけれど。
 

みんなとちがう、それで不安に

 
 たぶん、こういうやりとりって、セブンイレブンやローソンじゃできないんじゃないかな。やるならデイリーヤマザキとかミニストップあたり。いや、きっとやっても良いんだろうけど、「やったら怒られるんじゃないかな」みたいな空気が浮かんでいる。それはたぶん、客ではなく店員さんのほうに。窮屈な世の中だ。
この続きは1ヶ月無料のお試し購読すると
読むことができます。

関連記事

「答え」は「どこか」でなく「ここ」にある ひきこもり時給2000円最終回

448号 2016/12/15

今だから話せるコト~一番つらい時期になぜ死にたくなったのか ひきこもり時給2000円

447号 2016/12/1

母に直接聞いてみた~僕がひきこもっているときに何を考えてた?

446号 2016/11/15

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)

625号 2024/5/1

「つらいときは1日ずつ生きればいい」。実業家としてマネジメントやコンサルタント…

624号 2024/4/15

タレント・インフルエンサーとしてメディアやSNSを通して、多くの若者たちの悩み…

623号 2024/4/1

就活の失敗を機に、22歳から3年間ひきこもったという岡本圭太さん。ひきこもりか…