不登校新聞

435号 2016/6/1

嘘を重ねた16歳の私へ 【不登校とLGBT】

2021年06月25日 16:46 by motegiryoga



 いま29歳になった私から、10年以上も前の、16歳だった自分に手紙を書きます――。
 
 拝啓 
 
 16歳のあなたからすれば別世界のような話ですが、2016年のゴールデンウィークに、「東京レインボープライド2016 パレード&フェスタ」が開催されます。東京都渋谷区の代々木公園とその周辺で開かれる、セクシャルマイノリティ(性的少数者)への理解を深めるための祭典です。
 
 2016年5月8日、29歳になった私は渋谷のスクランブル交差点から表参道を抜ける、3キロほどのパレードコースを歩きます。(5月の爽快な夏日になるので、将来日焼け止めを忘れるな、と言っておきます。)パレードの参加者は4500人、沿道応援やイベント会場の来場者を合わせて7万5000人と、過去最高を記録します。
 

同性に恋をした 棘だらけの日々

 
 16歳のあなたは同性に初恋をして、自分がはっきりとゲイだと分かったころでした。不登校や親子関係の課題に加えて同性愛ですから、あなたの日常は見えない棘だらけになっていました。「ふつう」であれば気にかけない学校や異性についての世間話でも、あなたは二重三重の嘘を重ねねばなりませんでした。
 
 LGBT(※)の自殺率はそうでない人に比べて4倍高いということも、あなたはしばらくすれば知ることになります。
 地元の東京都江東区では、何度か遊びに行ったことのある場所で、同性愛者が狙い殺される事件も起きていました。あなたは自分の未来を、自殺することと共に他殺されることも想定して悲観していた――。
 
 古い時代のごく一時期には、不登校も同性愛も病気とされていましたが、どちらも本来は自然なものです。今ある統計の一つによると、日本のLGBTの割合は7・6%。「クラスに1人か2人いる」……というたとえは学校に行かなかったのでピンときませんが、この割合を苗字に代えるなら、「佐藤・鈴木・高橋・田中・渡辺」を合わせたよりももっと大きな数字です。
 

あなたは一人じゃない

 
 あなたはLGBTの友だちが1人もいないと思っていますが、それは相手から伝えられていないだけで、本当は何人ものLGBTと会っているはずです。
 
  統計はないのですが、私はLGBTの中の不登校やひきこもりの割合は、異性愛者のグループよりも高いと思っています。パレードの日にスピーチをするC・ケネディ駐日米国大使も、LGBTの多くの子どもたちが大人からの差別に直面している、と言及します。東京レインボープライドはお祭りでもあるのですが、セクシャルマイノリティの人権を訴える真剣な場でもあるのです。
 
 あなたはまだ知りません。パレードが終わった後、私はゲイの友だちと手をつないで、 野外ステージのパフォーマンスを見ます。「Secret Guys」とか「Chara」のライブに声を上げて拍手します。イベント広場のあちこちに知り合いがいて、未来のあなたは孤独からほど遠い1日をすごします。帰りには友だちとパスタを食べて帰ることも、16歳のあなたはまだ知りません。あなたには別世界でも、私には現実の今日なんです。何もかもハッピーになるだなんて言えませんが、あなたの悲観した未来とは、別の1日もあるのだと伝えておきます。すべてではないけれど、好きな人に好きだと言える自由を、将来のあなたはもっています。
 

未来には希望が

 
 ただ、私はまだ知りません。今後LGBTの生きづらさがどうなっていくのか、差別禁止法や同性婚が国内でいつ成立するかを。それでも、未来の自分が今日に宛てて手紙を送ってくれるなら、そこには幸福を含んだ言葉も綴られているだろう、と今の私は希望を持っています。

敬具
 
※「LGBT」   L=レズビアン(女性同性愛者)、G=ゲイ(男性同性愛者)、B=バイセクシャル(両性愛者)、T=トランスジェンダー(性別越境者)に由来する言葉。
 
(写真提供/東京レインボープライド)

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