◎連載「不登校きほんのき」第9回
不登校は、法的に義務違反でも、問題行動でもないことは、これまでのこの欄をお読みいただけばわかると思います。ところが、学校に行かないことに加え、非行や夜遊びなどの問題行動があると、怠学というレッテルが貼られて、学校に行かないことまで問題行動と見られることがあります。それは大人のご都合主義または偏見でしかありません。同じような非行をしても、学校に行っていないとよけいに問題視されるということもあります。
問題行動の裏にある孤独感
しかし、子どもが学校に行かない理由を考えると、家庭にこもっている子どもも、外へ出て問題行動がある子どもも共通していることがわかってきます。どの子も、学校生活で、人と比較されたり、一人ひとりの存在が大切にされないで集団管理され、いじめなどの対人関係の緊張、息苦しさに耐えられない気持ちになったりして、学校と距離をとるようになります。そのようにして傷ついた子どもが、自分なりの居場所を求めて模索したり、孤独や不安を紛らわせる気持ちの表し方が問題行動になる場合があるというだけです。
そのように子どもの視点で、子どもの身になって、非行や問題行動の意味を考えなければ、ただ抑え込もうとしても、問題解決の支援もできません。以前、ある中学生の母親から相談を受けました。毎日学校を遅刻するようになり、仲間とケンカや恐喝など非行がエスカレートしていて悩んでいるとのことでした。
私は毎朝、無理矢理起こして学校へ押し出すのをやめて、当人にも無理をして学校へ行かなくていいと言ってみることを助言しました。母親は思い切ってそれを実行したら、その子はまもなく学校を休み、家ですごすようになり、家族もそれを受けいれると、非行がなくなり、穏やかな日常が戻ってきたというケースもあります。子どもにとって、不登校が問題行動なのではなく、問題解決の手段であるわけです。(多田元・弁護士)
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