不登校新聞

312号(2011.4.15)

論説 森英俊

2013年08月05日 15:27 by kito-shin
2013年08月05日 15:27 by kito-shin


発達障害の乳児に精神薬? 安易な医療依存に注意を


 本年3月の厚生労働省の調査で、自閉症や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの「発達障害」があると診断された乳児に対して精神安定剤や睡眠薬などの「向精神薬」を処方している専門医が3割にのぼることが分かった。さらに小学校低学年まで含めると約5割、高校生まで含めると約7割も処方されているという。子どもを対象にした向精神薬の処方実態が調査されたのは、初めてのことだ。小児や思春期の子どもたちの心や身体の発達課程で大きな影響を及ぼすおそれがあるため、厚生労働省でも慎重な処方を求めている。

 「発達障害」は元来、学校現場から概念が導入されたものであり、あきらかな疾患というより学校現場における症状群と考える学者もいる。とくにADHDなどは学校現場に適応できない子どもをラベリングするためにカテゴリー化され、特別支援教育もまた、そういう背景のなかで生まれてきた。たしかに「発達障害」や「自閉症スペクトラム」と呼ばれるカテゴリーに入る子どもの存在は以前から知られていた。しかし、それはけっして治療や矯正の対象ではなかった。

 近年、不登校をする子どもは学校不適応であり、何らかの「発達障害」を持っているという専門家もいるが、では「発達障害」は治るのかという質問に明確な回答を出せる専門医は誰もいない。あくまでも学校という教育現場での安心できない状況で生まれた症状にすぎず、それを一時的に「向精神薬」で抑えても、本質的な解決にはならない。むしろ弊害のほうが大きいようなケースもある。
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