
◎連載「不登校きほんのき」第7回
日本では、6歳から15歳まで9年間小学校・中学校に通う学校制度が定められ、学校教育法は、それを義務教育と定めています。それは、憲法26条が、子どもの保護者である国民は、その子どもに「普通教育」を受けさせる義務があると定めていることに基づくものです。
普通教育とは、高等教育や専門教育以外のもっとも基礎的な教育という意味で、学校だけに限定されないのですが、いま、日本の法律は、その普通教育の受け皿に学校しか設けていません。
大切なことは、憲法の義務教育は、子どもが自由に学ぶ権利を保障するためのものだということです。義務教育の義務は、子どもの義務ではなく、子どもの学ぶ権利に対応する国などと親の義務と理解されます(最高裁昭和51年5月21日大法廷判決も明言しました)。
いま、小・中学校で、学校に行こうとしても、いじめや教師の暴力、息苦しくなる雰囲気などがあるために、行けなくて悩む子どもや親が少なくありませんが、学校が自分に合わない環境と感じられるときに、子どもが学校に行かないことは、義務違反でも違法でもないのです。保護者も子ども自身が行きたくないという意思を表明しているときに学校へ行くことを強制する義務はありません。むしろ、そういうときに無理に学校へ行かせることが子どもをいっそう傷つけ、苦しめるなら、人権侵害になります。不登校になって家庭で安心を得て過ごすことは、その子どもにとっては自分の心身の安全と健康を守るための一種の「屋内退避」と考えたほうが正当だと言えます。不登校と子どもの学び、成長との関係については、次の機会に譲ります。(多田元)
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