不登校新聞

311号(2011.4.1)

東日本大震災 親の会、居場所、家庭は…

2013年08月05日 15:33 by kito-shin
2013年08月05日 15:33 by kito-shin




つながりが心の支えに


 3月11日、三陸沖を震源とするマグニチュード9・0の巨大地震「東日本大震災」が発生。この地震により、東北や関東で震度6強~7の強い揺れがあった。現在も余震や放射能漏洩などの問題が起きている。不登校の子や親を支えてきた被災地の親の会、居場所、家族は、どんな状況におかれているのだろうか。

 宮城県気仙沼市。たびたび報道されるこの町は大津波が街を襲い、海岸付近の街が水没。さらに全長数㎞に及ぶ大火災が発生した。この地で親の会の世話をしていたのが加藤ミチさん。震災から12日後、やっとその安否が編集部で確認された。第一報から加藤さんは「津波は自宅からすぐさきの大通りまできましたが私たち家族は全員無事です。ただ、亡くなった友人もいます」と声を詰まらせた。

 同様に津波が目鼻の先に迫ったのが宮城県塩竃市の後藤美年子さん宅。自宅は海岸まで600mのところにある。地震後、すぐに家の裏の坂道を駆け上り学校へ緊急待避。家から徒歩1分のところにまで津波が押し寄せていたため、体育館で2泊避難した。潮が退いてから街を見渡すと愕然とした。「街が泥とホコリと海水まみれで、道路にはガラスが飛び散り、道路の脇には津波で流された物が山積み。あの瞬間から街が一変しました」(後藤美年子)。

 福島県須賀川市の大岡桂子さん(ふくしま登校拒否を考える会世話人)は運転中に被災。震度6強の揺れに「ひっくり返る!」とハンドルを握ったまま観念したが、幸い、事なきを得た。

 この震災によって、自宅から動ける状態にない不登校、ひきこもりの人が集団生活の避難所暮らしに苦しんでいる、物理的に居場所が奪われ親子関係が悪化している、という情報も親の会の世話人から入ってきた。

 一方で、連絡がつながった被災地では希望の持てる言葉も聞こえた。後藤美年子さんの娘さんは約15年ほど前から家を中心にすごしている。後藤さんは「ふだんは物静かな娘ですが、この震災ではしっかりしていました。みなさんから不登校でもちゃんと成長するんだと言われてきたこと、それを今回、とくに感じました」と語った。

 震災から約20日間。助けになったものはなんだろうか。

 「そりゃあもう、つながりです」(後藤美年子)、「お金があってもガソリンすら買えない。不登校で、心からつながれた方からの声に励まされました」(大岡桂子)。

 つながりの力が心の支えになった。ふくしま登校拒否を考える会では、早くも4月10日には親の会を再開する(場所 んだね・かふぇ/時間・午後1時30分~4時30分/連絡先024・934・4051)。

 居場所発の支援被災地で早くも


 被災地でいち早く具体的な支援を始めたのが、福島県会津若松市の寺子屋方丈舎の江川和弥さん。行政、ボランティア、地域のNPO、組合らと連携を図り、15日から朝の炊き出しを実行。現在、毎日2200個のおにぎりを配布している。また、「社会や周囲の大人の不安を感じながらでも、子どもは遊び、そのなかで学び成長する」という思いから、避難所で遊び場を創設。毎日朝10時から子どもたちの遊びを支えている。

 東日本大震災は未曾有の震災、津波、火事が起きたが、それだけではない。福島第一原発から約55㎞離れた福島県いわき市在住の方から「原発の影響は天災以外のもの。その影響で復興の遅れもある。今後のことも含めて許し難い被害が広がっている」と怒りをあらわにした。

 阪神大震災を経験した神戸親の会の元世話人中島絢子さんは、今後、必要な支援策についてこう話す。

 「今後、根本的に必要なのは『生活の見通し』が立つかどうかです。そのときに家屋全壊者には100万円が支給されるなど制度を知っているかどうかも大きなポイントです。そして、支援策はまだまだ不十分です。国が本気で動くために市民が働きかけるのも必要不可欠です」。

 被災者への支援制度は多種ある。内容は内閣府HPでも紹介されているが、有効に活用するためには日弁連など弁護士会の無料電話相談を利用するのも効果的だ(日弁連・東日本大震災無料電話相談/0120・366・556)。

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