
連載「酒場の支援論」
本屋で突然トイレに行きたくなることを「青木まりこ現象」というらしい。会議のあと飲みに行きたくなる現象には名前はないのだろうか。ここのところ会議が多く、まっすぐ帰るのが難しい。
酔った頭で考える。吉野朔美のマンガ『恋愛的瞬間』にこんなセリフがある。「他の誰とも混ざりたくなんかないもんね、俺。俺は俺、人は人。何時でも何処でも誰とでも対立していたいの。ただ、彼女だけが俺を優しい気持ちにさせるんだよ。俺に優しくすることを、俺は彼女にだけは許すんだよ」。
あたり前のように「支援」と言う。または「サポート」と言う。「受けとめる」と言い、「認める」と言う。「傾聴」とも「寄り添う」とも言う。
ところでそれは、相手に許されているのだろうか。
自分と他人をわけるのは案外難しい。よくこういうトレーニングをする。子どものようすを話してもらう。「最初はつまらなそうな顔をして、黙ってゲームをしているだけだったんですが、次第に関係ができて、話しかけるとうれしそうに笑顔を見せるようになりました」。見事に自他が入り混じっている。正確にはこうだろう。黙ってゲームをしている子を見て、「つまらなそうな顔をしているな」と感じた。そのうち、話しかけると笑顔を見せるようになった。
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