連載「あのとき、答えられなかった質問」vol.9
「どうしたらひきこもりの人も働けるようになりますか?」と聞かれたら「もう少しゆるく考えて、フルタイム就労とか正社員をひきこもりのゴールと考えるのをやめませんか」と答えます。
「どうしたら働けますか」という質問は、お子さんが「ひきこもってはいるが病院や居場所には行けるようになった」という親の方からよく聞かれます。私の場合は母親に「怠けてないで働きなさい!」と言われ、いきなり働くことをスタートさせ、その後、ひきこもりの自助会に参加するという感じでした。ずいぶん遠まわりした感があります。もちろんバイトを始めたころはつらいことばかりでしたし、1週間でやめたバイトもいくつもありました。でも、つらいことばかりで何も得るものはなかったのかと言えばそうではありません。エクセルや経理ソフトの操作を覚えたのはバイト期間中です。かんたんなビジネスマナーやファイリングのやり方も教えてもらいました。またそういった技能だけでなく、人間関係の面でも勉強になりました。そちらの場合は失敗からのほうが多いですが……。
現在、古本屋をやるうえで、これまでのバイトや会社員での経験が役に立っています。たとえ1週間でやめてしまったバイトも今となってみればひとつの経験であり、現在の仕事の糧となっている気がします。
ひきこもってしまった私たちは、一般的な社会のレールからは外れてしまいました。多くの人は「人はなぜ働くか」と問うこともなく仕事の現場に入っていきます。
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