連載「あのとき、答えられなかった質問」vol.10

 「好きなこと、やりたいことがないのですが、どうしたらいいでしょうか?」と聞かれれば「まずは嫌いなものから考えてみては」と答えます。
 
 当事者はときおり「好きなことだけでもやってみれば」と言われます。でも、「好きなこと、やりたいことがない」という当事者も多いんです。
 
 「好きなことがない」というのは、私自身、感覚的に理解できないところがあります。私は音楽が好きで、今でもたまにフリージャズのライブに行ったりもします。この齢までずっと音楽を追い続けているのは「エレキは不良がやるもの」というような親の元で育ったからかもしれません。禁止されたものほど人間は執着するんですよね。もし中学校時代にプレーヤーが買えて、同年代の友だちのようにロックのレコードが聴けたら、30年あまりも『ミュージック・マガジン』を1号も欠かさず買い続けることはなかったかもしれません。母の思惑とはまったく逆の結果になってしまったなと(苦笑)。ひるがえって現在のように情報や物にあふれ、タブーも少なくなった時代ほど、好きなものを見つけるのが難しいのかもしれません。
 
 哲学者・竹田青嗣氏が言うように人間の行動は欲望が原動力となります。


この記事は登録読者だけが閲覧可能な内容を含みます。続きを読むにはPublishers IDによる読者登録が必要です。