不登校新聞

創刊記念号

【公開】未来バンク・田中優さんに聞く

2014年03月03日 14:45 by kito-shin

がんじがらめの社会にサヨナラを



 今回は、地方公務員として勤めるかたわら、市民バンクを始められるなど、積極的に金融問題や環境問題について取り組まれている田中優さんのインタビューを掲載する。

「させられる」から「する」側へ


――田中さんはどんな学生時代を送りましたか?
 俺は高校を7回クビになったの(笑)。昔から、なぜか試験だけはやたらに強くて、いい成績で学校に受かるんだけど、すぐ中退になっちゃう。どこの高校に入ってもすぐケンカを売られるし、教師とはぜんぜん意見があわない。それと押しつけられるのが絶対にイヤだから、まあ、学校にはまったく向かないタイプ(笑)。
 
 ただ、当時はやっぱり高校を卒業したくて。毎回「今度こそは」っていう気持ちで入学してた。最後まで諦めがつかなかったなあ。親に援助を受けるのがイヤで、働きながら、何度も何度も高校に出たり入ったりして……、あのころは圧倒的にコンプレックスが強かったね。「人間のくずっていうのは俺みたいなヤツだ」って、そう思ってたから。

――その後、大学に進学されていますが
 結局、最初の高校入学から5年後に大検を取ったの。大検は楽だったよ、最初から、受けときゃよかった(笑)。
 
 大検を取って、その後は夜間大学に入学しました。一年目は車の免許を取ったので、乗りまわしているのが楽しくて楽しくて。仕事をして、明け方までドライブをして……、もう寝る時間もないんだから、学校行く時間はもっとない(笑)。そのまま辞めようと思ってたんだけど、学生運動が後期試験をつぶしてくれた。試験の代わりに送られてきたレポートを好き勝手に書いたら、全部いい成績で評価された。生まれて初めて評価されたんだ。「大学も悪いところじゃないな」って思っていく気になったんだ。それで2年目からはすこしまじめに、3年目にはさらにまじめに通った。結局4年間で、あり余るほど単位を取って卒業したんだ。

――いつから環境問題を考え始めたのですか?
 やっぱり、自分の子どもができてからかな。それまでは、モラトリアム人間って言われるほど、責任をとらずにやってきたの。でも、子どもができたら逃げられないじゃない。正直、ビビったよ(笑)。けど、子どもは親しか頼れないわけだから、さすがに「何とかしなければ」っていう気持ちになりました(笑)。子どもが生まれたことと1986年のチェルノブイリ事故が重なったのが、大きかったんでしょうね。

――学校や会社「組織」が人を苦しめる仕組みになっていますよね。
 いわゆる「発展途上国」に行くと、「生きていければ何をやってもいい」という自由さが当たり前にある。けれども、日本の場合は、組織のなかで徹底的に自分の考えや発想が規制されて、協調性が求められる。結果、しつけられちゃう。原発の必要性を聞けば、学生の半数以上が「原発はよくない」って答えるのに、電力会社の社員になると全員が「必要だ」と答える。社員のほうは、まったく自分の頭で考えていない。もう社畜と言っていい。
 
 組織はさまざまなキャラクターが集まるほど活性化する。組織が個性をなくさせるのだったら、そんな組織はないほうがいい、そう思うんですよ。
「発展途上国」に行くと、子どもたちが、とにかくおもしろがって生きてる。「生きるのがおもしろい」っていうのが大前提。そう感じられない社会や組織のほうが、やっぱりおかしい。
 

安全な働き方

 
――しかし、「会社」に属さなければ経済的には苦しくなります。
 自分の収入源が「会社だけ」と一本化してしまうと苦しいね。結果的にクビにされるのが怖くて、社畜にすらなってしまう。もし、会社だけでなく、別の稼ぎ口がいくつかあると、生活のセキュリティ(安全性)という面では向上します。
 
 絵が好きだったり、写真が好きだったり、そういう自分の好きなことを同時進行させて稼ぎ口にしていく。形にしたことは、臆せずにコンテストとか、いろんな場所に発表したらいいと思う。他流試合というか、そういう場に出すことで、自分の可能性を試していくのが大事でしょうね。
 
 僕も含めて、学校社会にあわない人は、早くサヨナラしたほうがいい。そして、開き直って自分を信じられたらもっといいと思う。

――個人の可能性を見つけられるかは大事ですね。
 「発展途上国」に対して、識字率向上のための教育運動があるでしょ。NGO関係者って高学歴の人が多いですよ。そういう人が、識字教育向上を考えると、たいがい「学校をつくりましょう」っていう発想になっちゃう。でも俺は文字をマンガで覚えた。いま、世界で一番おもしろいストーリーマンガは日本にしかないんだから、マンガを現地語にして売ればいいんだよ。おもしろいマンガがあれば、すぐ文字なんて覚える。学校なんかつくっちゃダメ(笑)。
 
 いろんなところにニーズがある。俺もNGO活動を始めたころは「権威」にビビってたところもあったんだけどね(笑)。「学歴がないから」と、みんなが寄りつかないことが、本当はネックになってるかもしれないね。
 

お金持ちがより金持ちに


――ひきこもりやニートをどう思われてますか?
 ひきこもり・ニートが、なぜ生まれたのか。構造的な問題だと思う。
 
 いま、日本を含めていろんな国で少子化が起きている。原因はどこもいっしょで、高学歴が高収入につながるから。だから、親は高学歴のために高額の学費をかけていく。当然、学費が払える範囲でしか子どもをつくらないから、少子化が進むよね。バーンと学費をかけたのに、子どもが一浪し二浪し何もしなくなって、親は気づく。「学校に行かせるより安上がりだな」って(笑)。親の稼ぎで食えるうちは、それでいいじゃない。それよりも、とにかく、この輪廻のような、がんじがらめになっている社会からどう抜けるかだよ。別に家で何年もグダグダ過ごしてもいい。学校や会社……、がんじがらめの社会に、どれだけ自分がとらわれていたのか、逆にどう抜け出すかを考える機会にすればね。
 
 社会の構造全体が閉塞的な構造になっている。このどうにもならない状況を素直に認めてるしかないと思う。ムリに幻想を持って合わせようとする必要はない。それより自分たちがどんな社会を目指したいのかを探すほうがいい。その前段階として、時間をかけて自分や社会を問うってのはいいと思う。「おかしいぞ」って疑い始めることが積極的に動く、「する側」へまわりはじめるきっかけになるんだから。これは、ひきこもりだけの問題ではなく、この社会では、多くの人が受動的に「させられ」ているんだ。「させられる社会」ってのは、まったくおもしろくないよ。ミスをしても責任をとらなくていいけど、逆に何一つ自分の功績にはならない。自発的に「する」側に切り替わらないと、おもしろいことは起きない。

――多くの人が徹底的に「させられ」ていますね。
 やっぱり社会のほうがおかしくなったんだよ。しかも、本当にどうにもならないところまできちゃった。どんなにクソまじめに働いたって、たいした報酬が得られるわけじゃない。200年ほど前のマルクス・エンゲルス時代から比べると、はるかに労働生産性が向上しているんだから。以前よりはるかにすくない労働ですむはずなのに何も変わっていない。原因は誰かがかすめ取って、お金持ちがよりお金持ちになる仕組みになっているからだよね。こんな社会に順応しなくていいと思う。
 
 できることの一つとして、生活費から考えるとおもしろいよ。たとえば、生活費全体の10%程度を携帯料金に支払っているとする。もし携帯電話に代わる仕組みをつくって、その仕組みに100人の人が乗っかってきたら……、10人の人の生活費が出せることになる。それは電気料金でも家賃でもいいけど、生活費のなかで大きなパーセンテージを占めるものを、別の仕組みに転換してしまえばいい。
 
 それと、何か「やろう」と思ったら、仲間を巻き添えにすることだよね。共感できる仲間を集めて、いっしょに次の時代の仕組みを築いていく。俺の考えでは仕組みを変えなくては、どうしようもならないと思っているから。自分と相手、相互に「利」がある仕組みをどうつくってけるか、それが大事だと思っています。
 
――ありがとうございました。(聞き手・石井志昂)

(この記事は2006年10月15日『Fonte』204号に掲載された記事です)

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