2017年8月末、文科省が来年度の概算要求を発表しました。おもに不登校に関係する項目を見ていくと、およそ73億円が予算として計上されています。
そもそも概算要求とは何か。かんたんに言ってしまえば、「見積書」のようなものです。「来年度予算はこれぐらい必要です」という積算根拠を省庁ごとにまとめ、毎年8月31日までに財務省に提出します。
財務省の査定や閣議決定などを経て、翌年の通常国会で審議されて予算として成立する、というのが決定までの大まかな流れです。
“カウンセラー” 全公立小中校に
では、73億円を何に使うのか。内訳を見ると、もっとも多いのが「スクールカウンセラーの配置拡充」で、およそ48億円です。
臨床心理士などの専門家を全国の小中学校に配置する動きは旧文部省時代の1995年から始まり、初年度は154校でした。
同省はかねてより、「平成31年度までに全公立小中学校2万7500校に配置する」との目標を掲げてきましたが、今回の概算要求を見るかぎり、来年度中に全公立小中学校へ配置を完了しようとしていることがわかります。いじめ・不登校に対してもっとも注力していた施策の目標達成を1年前倒しする、という力の入れようです。
教育機会、いじめ
今年2月に「教育機会確保法」が施行されて最初の概算要求ということで、教育機会の確保に関する調査研究に前年比8000万円増の2億円が計上されています。また、いじめに関しては新規事業として、SNSを活用した相談事業の調査研究に1億円が盛り込まれているのも今回の特徴の一つです。
いじめや不登校をどのように解決しようとしているのか。概算要求から、文科省の「今」の一端を知ることができます。さらに、文科省は長年、不登校対応の柱に据えてきた「スクールカウンセラーの配置拡充」を来年度で完了させる予定です。再来年度以降、配置拡充の枠を広げるのか、それとも不登校対応の中心となる新規事業を掲げるのか。文科省の「これから」にも注目です。(東京編集局・小熊広宣)
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