不登校新聞

470号 2017/11/15

“食べる”を大事に30年 松浦幸子さんに聞く【不登校50年/公開】

2017年11月15日 10:57 by kito-shin

連載「不登校50年証言プロジェクト」


松浦幸子さんは、東京都調布市でクッキングハウスという「心の病」を持った人の居場所でありレストランを開かれている。1987年に立ち上げられたので、ちょうど今年で30年になるが、クッキングハウス立ち上げのきっかけは、ご長男の不登校にあったそうだ。

 当初、松浦さんは、なんとか子どもを学校に戻そうとする一方、まわりからは責め立てられていた。しかし、松浦さんのお母さんだけは「幸子が心にゆとりをとりもどせますように」と、毎日、お地蔵様に祈っていたそうだ。松浦さんが子ども時代、お母さんは、いのちそのものを育てることだけを大事にしていた。しかし、松浦さん自身は、いつのまにか「成績がよくなってほしい」「ほかの子と同じようにできるようになってほしい」と思うようになっていた。

 松浦さんは自分の生き方がこれでよかったのかと問い直すようになり、つねに少数者の側で考えたいと思うようになる。そうした思いから、福祉系の専門学校に入り、当時は行きたがる人のいなかった精神科の実習に行き、「心の病」を持つ人たちと出会う。

 最初に閉鎖病棟を訪れたとき、病棟内は、おしっこや汗のにおいと、食事のにおいがごちゃごちゃに混ざりあって、吐き気がするほどだったという。窓には鉄格子がはまっていて、そこにパンツやタオルが干してあって、「こんな高度成長した日本のなかで、忘れられたように精神科にずっと入院している人たちがいる。とても素直で、正直で要領が悪くて不器用な人たちが、私たちがあたりまえにしている日常生活を送ることができず、閉鎖病棟のなかで生きている。そして、そういう事実が誰にも知られていない」と、社会への怒りが湧いてきたという。そして、食べることを大事にした居場所、クッキングハウスを立ち上げられる。

 実際、クッキングハウスのご飯は、ほんとうにおいしい。そして、場は明るい雰囲気に満ちている。それは、来る人を問題とまなざすのではなく、その人の存在を受けとめる場だからなのだろう。しかも、言葉のうえだけではなく、食べることをベースに、身体ごと受けとめられる場なのだ。だからなのか、クッキングハウスでは、暴力沙汰は一度としてないという。どんなに怒って興奮した人でも、クッキングハウスでご飯を食べると、だいたい落ち着く。そして、こちらが変えようとするのではなく、その人が自分から変わっていくという。

登校拒否と医療

 インタビューでは、登校拒否と医療についても踏み込んでうかがっている。お子さんの不登校をきっかけに、「心の病」を持つ人の居場所を開かれてきた松浦さんには、ぜひ、このあたりについてもうかがいたかった。また、ほかにも、発達障害について、薬物療法について、SSTやオープンダイアローグなどの心理社会的療法について、家族との関係をどう考えるかなど、さまざまにうかがっている。くわしくは本編を読んでいただきたい。(プロジェクトチーム統括・山下耕平)

本編はこちら

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